不妊治療をサポートする代替医療~オステオパシーと漢方の融合

今回は不妊治療をサポートする代替医療シリーズとしてオステオパシーについて取材をしてまいりました。

私の友人の伝手で政木ひろえさんをご紹介頂きました。政木さんは現役の薬剤師でありながら、オステオパシーの施術者として多くの患者さんの治療にあたられています。それでは政木さんへのインタビューをご覧ください。

 

●オステオパシーについて教えてください 

オステオパシーというのは、テクニックではなく概念になります。哲学の原理として、ボディ、マインド、スピリットは三位一体である。つまり、体のバランスを整えると、心のバランスもとれる、その逆もしかりという考えです。そして、その概念を持ちつつ、筋骨格系、神経、血管、リンパ、脳脊髄液といったものを調整することで、ボディのバランスを整えます。その整えるということが「施術」となってきます。

オステオパシーの発祥元はアメリカで、アメリカでは医師と同等の資格になりますので、アメリカのオステオパシードクターは、薬が必要であれば投与しますし、手術なども行うことがあるようです。

日本ではオステオパシーは国家資格ではないため、手技療法にとどまるのですが、私の場合は3年間の専門学校に通い、解剖実習はアメリカのオステオパシー医科大学に行って、学んできました。ただ、短期で開催されるセミナーでオステオパシーを学び、オステオパシーの看板を掲げている施術院があるのも事実であり、施術者によって技量のばらつきが出てきてしまうのは、同じオステオパシーという名前で期待をして来てくださるクライアントさんに対して申し訳ないなという気持ちがあります。

 

 ●なぜ薬剤師の免許を持ちながら、オステオパシーをやろうと思ったのですか

オステオパシーを知る前は製薬会社に勤めており、副作用の報告書を作る部署におりました。ただ、それだと一人の方と自分がかかわる時間というのは本当にわずかで、副作用の情報を収集した部分だけになってしまいます。その人がどうしてその薬を飲み、他にはどんな薬を飲んでいるのか、合併症はないのか、どのような先生方と関わっているのかということは一部分しか見ることができません。また、薬の副作用情報だけなので、悪いところしか見えず、薬を服用してどのようによくなったのかという所はほとんど見ることができません。患者さま一人ひとりにお会いすることが出来たらなと思っておりました。

 

そこから、私が健康に携われるもの、出来ることを考え直しました。その時に薬学の知識を使って、薬膳料理のお店を作れればいいなと思ったんです。食べて元気になる、飲んで元気になるというようなお店を作りたいなと思い、色々なお店をまわっていました。

 

ある自然食を扱うお店に自然療法のパンフレットが置いてあり、それが『頭蓋仙骨療法』というもので、頭蓋仙骨療法が何かと調べた時に、オステオパシーのテクニックの1つだということを知りました。オステオパシーというのは、筋骨格系だけでなく、脳脊髄液の流れや、内臓の動きといったものを手で感知するという学問ということを知り、難しそうだけど、今なら勉強したら何とかなるかもしれないと思いました。

 

そして、製薬会社に勤めながら、夜間の学校に3年間通いました。製薬会社には4年半務め、学校を卒業すると同時に開業しました。

 

施術するベッドです。

施術するベッドです。

●実際の施術の時間配分は?

まず30分くらい、長い時は1時間くらいかけてお話を伺います。

最初に主訴(どのようなことで困っているのか、いつぐらいから、どうすると痛いのかなど、痛みの性質)を聞き、私の場合は薬剤師という立場も活かせるため、それに対してどんな薬を飲んでいるのか(鎮痛剤や解熱剤など)といったことも伺います。

薬の副作用が主訴の原因になっていたりもするからです。

 

そのあとにおよそ60分間の施術に入ります。長くやればいいというものでもなく、はじめのうちからピンポイントの治療ができると、かなりはじめの段階で改善されていることもあります。

 

 ●どういった患者さんが多いですか

東京という立地も相まってか、目の疲れから来る頭痛、肩こり、腰痛といった上半身の問題が多いです。特に頭蓋を中心とする症状が多いです。

 

 ●施術では具体的にどういったところを見られているのでしょうか?

例えば脊椎(=背骨)というのは、中に脊髄が通っていて、その脊髄から出てくる脊髄神経の傍らには自律神経の交感神経幹があり、相互に作用しています。つまり、脊椎の状態を良くしてあげることで、自律神経も正常に働かせることができます。頚部(=首)の下にある胸髄、腰髄は交感神経の支配、頚部の上にある延髄と仙骨の中にある仙髄は副交感神経の支配になるのですが、ストレスが強くなると、交感神経のシグナルがたくさん出ることになりますので、胸髄、腰髄に異常な緊張感と硬さがでてきます。

また、顎関節も注意するべき重要な部分の1つになります。膝や腰、顎の関節は滑膜関節と呼ばれ、同じ種類の関節になります。滑膜関節というのは例えば足のケガがあると、膝、股関節、骨盤、腰というように、そのケガを補うように調整していくのですが、最後に調整する場所が顎関節になります。なぜならその先の頭蓋骨の関節は縫合というもので、関節の種類が変わってくるからです。頭蓋骨はほとんど動きません。顎までがとてもよく動く関節の種類なので、最後に顎関節で調整する形になるのです。

つまり、噛み合わせを調整することによって、肩こりや首こり、背中の痛みが改善されることも多々あります。

 

診療室にはロフトがあります。

診療室にはロフトがあります。

 ●婦人科系のトラブルの方に見られる症状というのはあるのでしょうか?

月経不順、月経痛、不妊症、不育症、といった方は骨盤の硬さが共通しています。骨というと硬いイメージがありますが、骨の中には毛細血管が通っているので、血流がよくなると、骨に柔らかさが出てきます。施術前に触ると硬く、虚血状態になっている骨も、施術を行うことによって柔らかくなります。

 

また、関節の動きというのはとても重要で、硬いところが柔らかくなると同時に全体の安定感も出てきます。安定感というのは、例えば体にたくさんある関節が、数字の5という均一なレベルで動いていれば問題はないのですが、1つの関節が3のレベルでしか動かなくなってしまうと、それを補うために7のレベルで動かさなければいけない場所が出てきます。そういった場所は動きすぎて、関節が不安定になってしまいます。すると、その不安定になってしまった関節を補うために、周辺の筋肉が固まってしまうので、関節-筋肉バランス、関節-関節バランスを調整する必要があるのです。

 

 ●慢性疾患や、体の立て直しをしなくてはいけない患者さんにはどんな施術をされているのでしょうか?

『筋膜リリース』というテクニックを使っています。たとえば体の悪い姿勢、足を組む、腕を組む、同じ方向を向いて寝るといった体のバランス、また交通事故に遭遇してむち打ちになったという衝撃なども、筋膜という所が覚えています。その筋膜をリリースすることで、体のバランスをいったん解除します。

 

しかし、施術後はバランスが良くなっても、そのむち打ちがずいぶん昔のものであったり、姿勢も前と同じ悪い姿勢をしてしまうと、いったんリリースした筋膜が徐々に元に戻ってきてしまいます。そのため、何回か施術を行い、体に覚えこませることで、今度は逆に筋膜が良い姿勢を覚えてくれるので、体のバランスはだんだん良い状態で定着してくることになります。

 

 ●不妊の人が来られた場合はどのようなアプローチになるのでしょうか?

不妊治療でお越し頂く方に関しては、まず体を緩める手技療法を施し、体を温めます。そのあと再確認の意味で、もう一度体の血液の状態の改善などを見せて頂きます。その後、無農薬の漢方薬を用意し、それを下腹部から蒸気で吸収させる施術を行っています。

 

韓国で行っているヨモギ蒸しと同じ原理なのですが、ヨモギの入っている漢方薬に熱湯を注いで、それを沸騰させながら、蒸気をあてます。これを行う前と後に身体を触って確認するのですが、どんなに冷え性の方でも身体の内側から血行が格段に良くなっているので、いつも驚いています。回数としては2、3回の方もいらっしゃれば、続けて10回くらい施術される方もいます。

頻度としては、1週間に1回くらいの頻度でおすすめしています。

解説用の骨の模型です。

解説用の骨の模型です。

 

 ●患者さんの反応は?

実際に妊娠された方もいらっしゃいます。不妊治療以外にアトピーなどの皮膚疾患や冷え性、月経困難、卵巣膿腫といった方もいらっしゃいまして、体の調子が良くなったとか、月経が来るようになったといった報告は多いです。

 

●体外受精などをされている方などとの併用は可能なのでしょうか?

子宮の状態を良くするといった意味でも効果的だと思います。また、体外受精をする前に、卵子の状態、排卵の状態を良くするという意味で、事前のメンテナンスとしておすすめできると思います。

 

 ●いわゆる整体とは違うポイントというのがあれば教えて頂けますか

まず大きなところとして、一般の整体でいう、力を使った矯正というものを私たちはしません。なおしたい筋肉があったとしてもその筋肉が問題なのか、その筋肉の拮抗筋、あるいは協力筋が問題なのか、過去に負ったけがが問題なのか、そういった背景を探りながら根本原因を考えます。また施術に関しても、筋肉に圧力をかけるのか、筋膜の状態を変えるのかといった選択肢の中から最善の治療を行います。

こうお話をすると、初対面の方よりも、具体的な問診ができる回数を重ねた方の方が、よりよい施術ができるように感じられるかもしれません。でも、問診による前情報があったとしても、そればかりではなく、手の感覚なども頼りにして施術を行うので、初対面の方でも近しい友人でも大きな差はありません。

また、手技療法としての、触診のレベルには自信があります。骨を触るときには、皮膚、筋膜、筋肉、骨と順番に深く触っていきます。筋肉は幾層にも分かれていて、それらは浅筋膜や深筋膜という筋膜に覆われていますので、筋肉の方向や厚さを考えながら触診しています。なので、問診に基づいて臨床検査、体の関節の動き、筋肉の状態といったところを手でしっかり感知して、その動きを整えるということをしています。

 

 ●読者の方へのメッセージをお願いします

体の不調の原因は、ピンポイントで分かれば反応はすぐに出てくると思います。分からないからといって薬を飲んでみても治らない、手技療法でも手当たり次第押されてしまっては、揉み返しが起こるだけなので、良くなる方向にはいきません。オステオパシーでは、問診にはじまり、トータルに見させていただきながらクライアント様をサポートします。気になる体の不調がある方は、ぜひ一度足を運んでいただければ幸いです。

 

<まとめ>

私もオステオパシーという技術を初めて詳しく知ったのですが、身体の様々な症状に効果を発揮しそうだなと感じました。特に最近、不妊治療をされている患者さんで訴えの多い症状である肩こりや腰痛のような筋肉が関係するものは大きな効果を期待できるのではないかと思いました。

今のビジネスマンは身体を動かすことが少ないので、どうしても同一姿勢でキープしていたり、目を酷使したり、身体の血流やリンパの流れが悪いという面があります。

それが全体的な身体のコンディションに影響を与えていると感じます。このような筋肉や脊椎の状況を見ながら身体の状況を把握し、調整していくというのは古くて新しい治療法だなと思いました。

今まで鍼灸、マッサージで身体を調整していたけどもなかなか良くならないという方、医療機関での治療につかれてしまった方などにとっては試してみるべき治療法の一つかなと思いました。

 

政木さん、長時間のインタビューありがとうございました!

この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

★関連サイト

オステオパシー&漢方サロン オアシス

 

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