不妊治療とホルモン(4)~エストロゲン

女性ホルモンのひとつ、エストロゲンといえば不妊治療と切っても切れない深い関係をもっているホルモンです。

別名、卵胞ホルモンとも言われるこのホルモンは、美肌や健康を与えてくれる以外にも、妊娠を待ち望む方達にとってはなくてはならない存在なのです。

エストロゲンは、どうして必要なのか?過不足していると起こりうる疾患は?などを知ることは、妊娠に向けた身体づくりの第一歩です。

今回は、その一歩をさらに先へ進めるためにエストロゲンについて勉強していきましょう。

● エストロゲンとは?
エストロゲンには主に、エストロン、エストラジオール、エストリオールといった3つの成分が含まれています。

このうち最も含有量が多いのは、卵巣から分泌されているエストラジオールであり、血液検査での評価対象となるのも主にこの成分です。

気になるのはエストロゲンの働きですが、端的に言うと女性らしさを作り出すホルモンだといってもいいでしょう。特に妊娠という観点に立っていうならば、次のような役割を果たしています。

・ 卵胞の成熟を促進させる
・ 子宮内膜を肥厚させ、着床しやすい環境を整える
・ 頸管粘液の分泌を促し、精子の侵入をサポートする
・ 妊娠中に分泌量が増加し、乳腺を発達させ産後の母乳生成を促す

また、エストロゲンは妊娠出産に直接関わらない部分にも貢献しています。例えば、破骨細胞を減らして骨芽細胞を増やす働きをもつため、骨粗しょう症を防ぐことができます。

さらに、悪玉コレステロールと言われるLDLコレステロールの増加を抑えてくれるので、動脈硬化予防にも効果を発揮しているのです。

エストロゲンと同様の性ホルモンであるテストステロンは、アロマターゼ酵素によって一部がエストロゲンへと変換されます。

そのため、男性でもエストロゲンは一定量存在するのですが、アロマターゼ活性が高ければ血中エストロゲン量が増加し、肥満になるだけでなく精子の数も少なくなってしまいます。

また、それに伴って性欲減退や勃起障害も引き起こすことがわかっています。

正常値は下記の通りです。
エストラジオール値を測定しています。

<女性>
エストロゲン(エストラジオール)
卵胞期…22〜147
排卵期…57〜509
黄体期…56〜321
月経期…7〜153
閉経後…6〜37
*単位はpg/mL

検査値が高い場合、下記の疾患が疑われます。
先天性副腎酵素欠損症エストロゲン産生腫瘍

検査値が低い場合、下記の疾患が疑われます。
卵巣機能不全、下垂体機能低下症

<男性>
10〜40
*単位はpg/mL

estrogen-effects

● 不妊治療薬としてのエストロゲン
エストロゲンを産生する大元、卵巣機能が低下してしまうと当然、エストロゲンの分泌は低下してしまいます。このような場合は、卵胞の発育低下を招くだけではなく、子宮内膜の厚さも担保できなくなりせっかく受精しても受精卵の着床を妨げることになります。

そのような場合は、体内で不足しているエストロゲンを外から補充することで、妊娠に最適な環境を整えることができるのです。

エストロゲンを補充するための製剤は多様で、経口剤や注射剤、そして貼付剤と異なる剤型が多く存在します。それぞれにメリットデメリットがありますので、そちらについては以前紹介したこちらを参照してください。

エストロゲン製剤ってどんなお薬なの?

エストロゲン製剤ってどんなものがあるの?(経口剤)

エストロゲン製剤(経皮吸収)

エストロゲン製剤(注射剤)

需要の多さを表すかのように、様々な製剤が販売されているエストロゲン製剤。現在使用している、これから使用する予定という方たちは是非、お手元の製剤と見比べながら上記のサイトを見ていただけたらと思います。

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