CMポートクリニック(横浜市)訪問記~不妊治療とお薬について

今回はCMポートクリニックの院長、安部先生にインタビューをさせて頂きました。安部先生は東邦大学大森病院のリプロダクションセンターの初代センター長を歴任後、センター南駅徒歩1分のところにCMポートクリニックを設立されました。

安部先生のユニークなところは、患者さんは院長自らすべて自分の目の届く数だけをしっかり診ること、そして自分のお休みを返上して、休日ですらも毎日診療されているところです。その徹底ぶりに根強いファンがいるクリニックであります。

院長の安部先生です。

院長の安部先生です。

それでは安部先生へのインタビューをご覧ください。

●先生にとって治療の一環の中の薬の位置づけを教えてください。

「薬は基本的には毒です!!」・・・・・というのは冗談で、薬は使い方のよって、副作用が起きるので必要最小限度で活用するというのが私のスタンスです。

もちろん必要な人に適量投与することが治療上大事な事です。しかし、転院されてくる患者さんを診ているとそうじゃないケースをよく見るので、当院ではその点を重要視しています。

「よく分からないけど、まあとりあえず薬を出しておきます」というようなことが最も嫌いで、患者さん一人一人をきちんと見極めて処方を出したいというのが私の姿勢です。

てきとうな感じで処方を出されている場合。それは最初に言った通り、まさしく毒になってしまう可能性が大きくなります。

しかし、面白い事に患者さんの中には薬を出してくれるドクターが良いドクターで、「前のドクターは私にこんなたくさんの薬を処方してくれていたのに、なぜここでは出してくれないのか?」と言われることもあります(笑)。

それはあなたの不妊治療には必要なく、妊娠するためには逆に邪魔になりますよと言っても薬は効くものだと信じきっている方もおられるのです。これは逆に怖い事だなと思っています。

医師の言葉でこのようになるのですから、我々の一言一言の重要性を思い知らされます。日本人の薬好きとよく世界で揶揄されますが、薬は安心材料の1つのシンボル的なものになっているのでしょうね。

●そのような薬にとらわれた患者さんにどのように説明をされるのですか?

とにかく、「あなたには薬が必要ないですよ。」ということを丁寧に説明します。
その上で、不妊治療の目的は元気な赤ちゃんをその手に抱く事なので、薬を飲む事ではないし、薬の副作用を起こすことは逆効果になることを説明するとほとんどは納得して頂けます。

●気を付けていても副作用が出る場合もあると思います。気になる副作用はございますか?

やはり薬に対してのアレルギーですね。
薬の投与により、発疹が出てくるようなケースもあるので、これはとても危険だし、気になりますね。

●昔、排卵誘発による多胎が問題になりましたが、今ではあまり気にならない感じでしょうか?

当院では凄く注意して取り組んでいます。
一般排卵の時は排卵誘発をしなければいけない人に排卵誘発し、
今、発育卵胞数4個以上だとキャンセルします。避妊してくださいと言います。
発育卵胞2個だとGo!
卵胞3個の場合はその時の年齢や卵巣の状況で決定しています。

●先生が新薬を採用する時の条件を教えてください。

安全性が一番でしょうね。
安全性が高く、次に効果のあるものという順番になります。

●今まで長きに渡って使われてきたFSH製剤やhMG製剤の使用法について変化があれば教えてください。

池上さんもご存知だと思いますが、その昔はhMG300単位とか当たり前のように使っていた時期がありますが、今ではそういうケースはまれで、150単位を使う感じになっています。下垂体性の排卵障害の場合、LHを持たないFSH製剤は使用に適さない事が多いし、逆にPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方には適応症上、hMGは原則使えません。そのような使われ方がきちんと決まってきたと言えます。

ただ、下垂体性の排卵障害の方のような難しい場合は300単位を使うケースもあります。

●先ほど、PCOSの話が出たので、お聞きしたいのですがPCOSは増えているのでしょうか?

厳密にいうPCOじゃなく、PCOの特徴を併せ持つようなPCO様の症状が増えてきているのは感じますね。そのうち、本格的にPCOになって、無排卵になっていくのかなと経過を見ていく感じです。

●期待している新薬とか技術はありますか?

私がいつも思っているのはhMGの投与経路を変える技術が出てきてほしいということです。経口剤とか。

しかし、hMGの分子量は大きいので、注射以外は無理そうな感じです。hMGでなくてもhMGと同じ働きをするものが出来れば、これは、不妊専門医は全員使いますね(笑)
まず自己管理しやすいのは大きいと思います。

自己注射も広まってはいますが、説明・指導や薬効の管理をするのが大変ですので。

まったく新しい排卵誘発剤も期待したいですね。クロミッドぐらいの効果で着床障害の副作用をおこさないようなものが出てくると面白いですね。

<まとめ>
安部先生の薬に対する根底の考えは必要なものを出来るだけ最小限度に使い、安全性の高い治療をしつつ、効果を出すというところだと感じました。

いきなり冒頭から「薬は毒だからね~」という言葉には驚かされましたが、薬は副作用があることの前提を言われていたということが分かりました。
私もそうですが、クリニックに行って薬をもらえないとなんだか治療してもらえなかったような気分になるのは間違った認識だということですね。勉強になりました。

お忙しい診療の合間に取材に応じて頂きました安部先生にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

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