子宮内膜症〜診断と使われる薬剤について

今回は子宮内膜症の診断方法と治療に使われる薬剤について書いていきたいと思います。

●どのような診察が行われるの?
子宮内膜が疑われる場合、どのような診察を行うのでしょうか。

まず最初に、問診を行います。
ここでは現在の月経の様子や出血量、そして初潮の時期や痛みの状態などを確認していきます。また、不妊の兆候があるかどうかも同時にヒアリングします。子宮内膜症であれば、不妊症になる可能性が高くなるからです。

その後、内診が行われます。経験したことがある方はおわかりかと思いますが、力んでしまっては正しい判断がしにくくなります。深呼吸しながらリラックスすることで、診察をスムーズに進めることができます。このとき、膣内に器具を入れて経膣超音波検査も同時に行い、卵巣の状態なども詳しく観察します。

その他、必要に応じてMRIやCTといった画像診断や、直腸から指を入れて触診する直腸診を実施することもあります。検査はひとつを行えば全てがわかるといった万能なものはありません。このように、様々な角度から検査を行って総合的に判断していくのです。

最も確実なのは腹腔鏡検査になります。目で見て直接確認できますからね。ただ、お腹に穴を空けることになりますので、手間と費用がかかることになります。

真ん中の黒い点が子宮内膜症、右のひきつれが癒着になります。

真ん中の黒い点が子宮内膜症、右のひきつれが癒着になります。

 

●子宮内膜症で使われる薬剤
《非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs》
子宮内膜症が軽症の場合は、ロキソニンやボルタレンといった非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用します。この薬剤は、痛みの元となるプロスタグランジンを抑え、炎症を防ぐことができます。

長期間にわたって服用することで胃腸障害を引き起こすこともあるので、クリニックでは胃腸薬と一緒に処方されることが一般的です。

《ホルモン療法》
子宮内膜症はエストロゲンの分泌を抑えることで、症状の進行を抑えることができます。その原理を利用して行われる治療法が、ホルモン療法です。

▶︎GnRHアゴニストを用いる方法
GnRHアゴニストは、点鼻薬のスプレキュアやナサニール、注射剤のリュープリンといった薬剤を指します。これらを使用することで、脳の下垂体に直接働きかけて性腺刺激ホルモンの分泌を抑制します。卵巣への刺激が抑えられるので結果的にエストロゲンの分泌量は低下し、子宮内膜の増殖が抑えられるのです。

エストロゲン量自体が低下するので、閉経後と同じような状態を作り出すことができるのですが、その欠点として更年期障害を引き起こしてしまうことが難点です。

GnRHアゴニストの詳細については、以前ご紹介したこちらを参考にしてください。
不妊治療にも子宮内膜症治療にも使われるGnRHアゴニストってどんな薬なの?

▶︎ダナゾール療法
男性ホルモン剤を含有するダナゾール(製品名:ボンゾール)を経口投与する方法です。GnRHアゴニスト同様、脳の下垂体に働きかけることでエストロゲンの分泌量を減らし、閉経状態を作り出します。

男性ホルモンが含まれているので、服用することで体毛が濃くなったりニキビや体重増加がみられます。
下記に、ダナゾールの詳細を掲載するので参考にしてください。

○一般名:ダナゾール錠
○製品名:ボンゾール錠100mg/200mg

○用法用量
通常、成人にはダナゾールとして1日200〜400mgを2回に分け、月経周期第2〜5日より、約4ヶ月間連続経口投与する。症状により増量する。

○効能効果
子宮内膜症

○使用上の注意
血栓症を起こす可能性があるので、既往歴のある患者は使用できません。
また、重篤な肝機能、心疾患がある場合も同様です。

○副作用
主な副作用として、痤瘡やむくみが生じることがあります。
また、重大な副作用として、血栓症や心筋梗塞、劇症肝炎が報告されています。
下肢の疼痛や浮腫、嘔吐や激しい頭痛がみられる場合は直ちに医師の診察を受けてください。

<参考:PMDA情報>
一般名:ダナゾール錠

製品名
ボンゾール錠100mg

ボンゾール錠200mg

《ピル》
エストロゲンを含むピルは、服用すると妊娠時と同じような状態を作り出します。排卵も止まりますので、それに追随して子宮内膜の肥厚も抑えられます。ピルは服用することで子宮内膜症の症状が軽くなるだけでなく、月経量も減少して月経痛も軽くなります。

ピルの詳しい紹介については、こちらをご覧ください。

不妊治療にも使われるピルってどんなお薬なの?

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・ジエノゲスト療法
近年になって発売された黄体ホルモン剤、ジエノゲスト(製品名:ディナゲスト)用いる方法も選択されるようになってきました。この薬剤は、プロゲステロン受容体に対する選択的なアゴニスト作用を示し、卵胞の発育や子宮内膜組織の増殖を抑える効果があります。

卵巣に作用して、必要以上にエストラジールの血中濃度を下げないので、更年期障害も引き起こしにくく骨粗鬆症のリスクがある場合も使いやすい薬剤です。

気になる副作用ですが、ジエノゲストは子宮内膜が薄く剥がれやすい状態を作り出すため、不正出血がみられる場合が有ります。しかし、長期間に渡って服用することで出血も少なくなっていきます。

○一般名:ジエノゲスト錠
○製品名:ディナゲスト錠1mg/ディナゲストOD錠剤1mg

○用法用量
通常、成人にはジエノゲストとして1日2mgを2回に分け、月経周期第2〜5日より経口投与する。

○効能効果
子宮内膜症

○使用上の注意
診断のつかない異常性器出血のある場合は投与することができません。
また、子宮腺筋症や子宮筋腫についても出血を促すことがあるので、慎重に投与する必要があります。
このほか、うつ病の既往歴や肝障害のある場合も慎重投与の対象となります。

○副作用
最も多い副作用は不正出血、そしてこれに伴う貧血です。
大量に出血した場合や長期間に渡って続く場合は医師の診察を受けてください。

<参考:PMDA情報>
一般名:ジエノゲスト錠

製品名
ディナゲスト錠1mg

ディナゲストOD錠1mg

子宮内膜症の進行具合や妊娠出産の希望の有無によって、手術を行うこともあります。手術には大きく分けて子宮や卵巣を残す保存手術と、子宮と卵巣を全て切除する根治手術がありますが、今度どのようなライフスタイルを過ごすのか医師とよく相談した上で決めていきます。

病巣が小さければ、体への負担も軽く入院期間も少ない腹腔鏡手術が取られますが、状況によっては開腹手術になります。この場合は、入院期間も長く体への負担も大きくなります。

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