リプロダクションクリニック大阪院長 松林秀彦先生取材記

このたび、2013年9月大阪駅グランフロントに開業されたリプロダクションクリニック大阪(泌尿器科医:男性不妊・婦人科医:女性不妊の両方から同時アプローチできる日本初のクリニック)の松林秀彦先生にインタビューをさせて頂きました。松林先生というと先生の書かれているブログが日本の生殖分野では最も読まれているブログということで有名です。今回はそのブログについても語っていただきました。

院長の松林先生です。

院長の松林先生です。

それではインタビュー内容をどうぞ!

1)今回、男性不妊と女性不妊を同時に治療するクリニックに勤務して、今までの不妊専門クリニック(婦人科主導)との違いを教えてください。

このクリニックで働くことになった経緯は石川先生にお聞きになられたと思います。以前勤務していた滋賀のクリニックの時から石川先生とは旧知で、男性不妊の患者さんのやり取りも月に1人ぐらいのペースでしていました。滋賀の不妊センターのプロジェクトは結局、断念しましたが、その時に石川先生からお声かけ頂き、リプロダクションクリニック大阪の構想が生まれました。

ここでは毎日、男性不妊の患者さんが来られるのですが、私もマイクロTESEの様子を見ますし、それが普通の光景としてあります。また、石川先生にしても毎日、体外受精を目にすることになります。そうするとお互いがお互いの仕事を理解することになります。

だから私も男性不妊の外来をやろうと思えば出来ますし、石川先生も女性不妊の外来が出来ると思います。

よって、患者さんご夫婦が来られた時に両方の視点で考えることが出来るので、奥さまの治療がこのように進むとして、旦那さんの治療はこうなりますというのが明確に説明できるわけです。

ご夫婦を全体として見た時に治療戦略をどのように考えるのかが重要なので、それを私たちは実践しているということです。片側だけを見ているとうまくいかないケースもあります。

よって、石川先生は女性不妊を最もよく知っている泌尿器科医で、私は男性不妊の事を最もよく知っている婦人科医であるということになります(笑)

クリニックはJR大阪駅につながっているグランフロント大阪内にあります。

リプロダクションクリニック大阪はグランフロント大阪タワーA15階にございます。

 

2)そのような治療戦略を実施されて成績はいかがですか?

はい、私が今までやってきた中で最も成績が良いと思います。
男性不妊・女性不妊を一緒にやりましょうということで行っているのが良いのか、あるいは、培養士さんの腕が上がったのか(厳しい精子の症例を毎日こなしているため、全体のレベルアップが進んだ)、最先端の事をやっていこうという取り組みが奏功しているのか、様々な要因が考えられます。

 

3)松林先生のブログは日本でも有数のブログで、すごいアクセス数になっていますが、最初から意図していた目的はあるのでしょうか?

ブログを始めた時は滋賀のクリニックに勤務していました。そこで不妊センターを作るプロジェクトがあり、滋賀県で、いかに知名度を上げることができるかということで始めたのがきっかけです。

内容に関しては正しい知識をお伝えしようということでコンテンツを作っていました。出所のわからない情報がネットに氾濫し、多くの方がそれを信じている(あるいはどれを信じたらよいかわからない)ので、正確な情報を提供しようと思いました。ですから、外国の論文を中心に、最新情報をお届けするというスタンスになっています。

一年ぐらい経った頃から患者さんからの質問が多くなり、Q&Aコーナーを作りました。現在Q&Aコーナーは回答までに2か月程度の待ち時間が発生しています。

Q&Aで生の声が見えてくるので、何が問題なのか参考になりますし、最近は海外在住の日本人からの質問も多いので、それにもお答えしています。対応するのは大変ですが、その記事を読んで妊娠された方も大勢出てきており、とてもうれしい限りです。役立っているというのを実感できるのはモチベーションのアップにも結びつきます。

ブログに関しては、東京銀座の両角先生が元祖ブログ王とでも言いましょうか、両角先生のブログを目標にしていました。ブログ開設1年半ほどで、妊活(ベビ待ち)部門のベスト10に入るようになりました。

ブログの効果は驚く程絶大で、全国から患者さんがおみえになります。海外からも患者さんが訪れます。クリニックは開院わずか1年半ですが、すでに47都道府県全てからお越し頂いております。北海道、沖縄からも数組、東京からは100組以上の方が来られています。

初めてのクリニックに初診でかかる場合、どんな先生なのか心配なのが普通だと思います。場合によっては、先生とかみ合わないこともあるかと思いますが、そのような場合、そのクリニックに行くのを止めるか、我慢して通うかの選択になるのではないでしょうか。しかし、ブログを読んで来られる患者さんは、初診の時、私に初めて会ったような気がしないとおっしゃいます。毎日の記事を見ていただいているので、ある程度の人物像と信頼関係がすでに出来ているのではないかと思います。診療に最も大切なコミュニケーションの獲得という意味でもブログが役立っていると感じています。

それから、このブログの目的のもう一つは自分自身のデータベース(脳の一部)としての役割です。英語の論文を読むと、その時は覚えていても時間が経過すると記憶が薄れていきます。後で探そうとしても論文がどこにあったのか見つけられなくなってしまいます。しかし、ブログに日本語で記事を残しておくと、スマホでもパソコンでもすぐに検索できますので、論文の内容を覚えておく必要がなくなります。

以上のような理由から、毎日時間をみつけて、論文を読み、ブログを書いています。

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

 

4)松林先生が薬を選ばれる基準を教えてください。

第一はエビデンスです。
それから患者さんに納得してもらえることが大事です。新しい薬剤でもしっかりとしたエビデンスがあれば使いますし、患者さんにメリットのある薬剤は、輸入して使うこともあります。

副作用の問題ももちろん考えますが、不妊治療においては副作用が極めて問題になるような薬剤は(使い方さえ間違えなければ)基本的にほとんどないように思います。

当院では男性不妊の患者さんが多いため、精子が最も貴重な資源となります。よって、体外受精を行うにあたって、卵巣刺激を行い、出来るだけ多くの卵子を採卵することを目指します。そのための副作用対策は万全に行っています。

5)今回の新薬ルティナス膣錠に関連して、先生の黄体補充に関する考え方を教えてください。

自然周期でも、ホルモン補充周期でも「不足していれば補う」というのが基本的な考えです。

現在、黄体ホルモン補充は3種類(座薬、経口、注射)を使っています。座薬はプロゲステロン膣座薬、経口はルトラール、注射はプロゲステロンかプロゲストンデポです。座薬の場合には吸収の悪い方がおられますが、そのような方では、座薬にこだわらず、注射を併用します。すべてオーダーメイドで処方しています。オーダーが煩雑になるのでナースには迷惑をかけていると思いますが、患者さんのためなので理解してもらっています。

驚くべきことに、黄体ホルモンの適正量(数値)は、いまだコンセンサスが得られていないのです。私は、ホルモン補充周期では10を目標に設定しています。

輸入薬のデメリットは、納品期日が思うようにいかないことと、不良品が多いことです。このため、在庫を多く持つ必要がでてきますし、何より検品作業が必要になることが一番のデメリットです。今回承認されたルティナス膣錠は国内の卸から納品され、不良品がないため、在庫をあまり持たず済みますし、検品作業も必要ありません。

受付側から見た待合室。

受付から見た待合室。

6)先生の健康管理について教えてください。

食事に最も気を配っています。低炭水化物食が基本で、美味しいお酒と食事でストレス解消しています。

大阪はお店の人との会話や隣の席の人との会話が楽しくできるお店が多いので、一人で行っても楽しめます。関東の方には大阪弁は怖いと思われがちですが、とてもフレンドリーな言葉で、心地よい感じがします。

7)今後のビジョンについてお話頂けますか?

今、北宅先生と一緒に頑張っています。症例が増えてくると、一人で診れる患者さんの数には限界があるので、多くの後進の先生を育てていくようにしたいと思っています。

石川先生と共に日本の生殖医療をリードする存在になるため、日々努力していくのみです。
今、仕事が楽しくてほぼ年中無休で働いている感じですが、それも苦ではありません。楽しみのグルメ(食べ歩きだけでなく自ら料理もします)をしながら日々エンジョイしています。

 

<最後に>

今回の取材では今、最も輝いている若手ドクターの一人、松林先生に様々な質問をさせて頂きました。ニコニコしながら仕事を楽しんで行われている様子がよくわかりました。

リプロダクションクリニック大阪の体外受精の件数は、開院後1年半しか経過していませんが、大阪で3番目くらいと聞きます。

こんな急成長なクリニックはたぶん未だかつてなかったと思います。それだけ多くの患者さんに支持されているのは、先生方やスタッフのご尽力と成績、そして、高い意識が伝わっているからだと感じました。

松林先生、お忙しい中、お時間を頂戴しありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

■関連サイト

リプロダクションクリニック大阪

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