不妊治療とホルモン(6)~テストステロン

これまで不妊の原因事由といえば、女性側にあると考えられていることが殆どでした。しかし実際に蓋を開けてみると、原因があるのは男女ともにほぼ同等の割合です。

男性側の不妊に大きく関係しているのが、男性らしさを形成しているテストステロンというホルモンなのですが、一体どのような影響を与えているのでしょうか?今回は男性側に寄り添って、気になる部分をみていきましょう。

● テストステロンとは?
テストステロンとは通称、男性ホルモンといわれるアンドロゲンに属するホルモンのひとつです。アンドロゲンにはこの他、免疫活性や若返りに関与しているホルモンデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)や、脱毛を促進させるホルモンジヒドロテストステロン(DHT)がありますが、これらの分泌量はそれほど多くはありません。

テストステロンはコレステロールを原料とし、下垂体からの刺激を受けて主に精巣で合成・分泌されます。そのため、偏食や過度なダイエットにより食事からのコレステロール摂取量が低下してしまった場合、それに伴ってテストステロンの分泌量も低下することになるのです。

そして気になるテストステロンの作用ですが、骨や筋肉の発達や性機能の維持に関わるだけではなく、やる気の向上や集中力といった精神面にも広く寄与することがわかっています。

さらに、実は男性だけに存在すると思われがちなテストステロンですが、女性の体の中にも男性の20分の1ほど存在し、筋肉量の増加や性欲の亢進などに関与しています。しかし、テストステロンはエストロゲンの活性を低下させるという作用も持ち合わせています。このため、テストステロンが上昇するとエストロゲンも同時に低下し、排卵障害を引き起こす場合があるのです。

男性不妊に際して行われるテストステロン値の検査は、早朝に分泌量が高まることを考慮して、通常は午前中の早い時間帯に行われます。

正常値は下記の通りです。

<男性>
1.31〜8.71ng/mL

検査値が高い場合、下記の疾患が疑われます。
睾丸腫瘍、副腎機能障害

検査値が低い場合、下記の疾患が疑われます。
睾丸機能不全、下垂体機能低下症、染色体異常

<女性>
0.11〜0.47ng/mL

検査値が高い場合、下記の疾患が疑われます。
卵巣腫瘍、多毛症、排卵障害

テストステロンは年齢が上がるに従い、減少してきます。

テストステロンは年齢が上がるに従い、減少してきます。

 

● 不妊治療とテストステロン
男性の体内においてテストステロンの産生量が低いということは、男性特有の性機能低下を招くことになり、結果的に不妊につながりかねません。

従って、テストステロン量が少ない場合は外部から補充することがあり、その際には次のような薬剤が用いられています。

・錠剤
エナルモン®錠25mg
(日本薬局方メリルテストステロン錠)

・注射剤
エナルモン®注10
エナルモン®注25
(日本薬局方テストステロンプロピオン酸エステル注射液)

エナルモンデポー®筋注125mg
エナルモンデポー®筋注250mg
(日本薬局方 テストステロンエナント酸エステル注射液)

テストステロンを補充する場合には、副作用にも注意が必要です。特に、前立腺癌などのアンドロゲン依存性悪性腫瘍に罹患している場合や、その疑いがあるときには添付文書上でも禁忌となっており、投与することはできません。

その他、多血や肝機能障害、前立腺肥大症を発症する可能性もありますので、いつもと様子が違うようであれば、受診予定日でなくとも早めに医師の診察を受けましょう。

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