不妊治療薬を製造販売している製薬企業紹介シリーズ~MSD
製薬会社の歴史を紐解いてみると、一つの企業だけで歴史を重ねている場合は少なく、いくつかの企業と合併などを繰り返しているケースが多く見られます。
この理由はいくつかあり、その時々によっても違うのですが、大きな背景として新薬の開発に膨大な費用・時間がかかることがあげられます。
現在、世に出ている治療薬は、有効成分を発見してから何年もの時間をかけて製品化しています。さらに、製品化した後も、様々な試験を行って治療薬の有効性だけではなく、安全性なども確認した上で販売されているのです。
しかし、待ち望んでいる患者さんに出来るだけ早く有効な治療薬を届けたいという思いから、最先端の研究をしている企業などと一緒に開発していくことがその実現につながる場合は、合併や業務提携を行います。
ちなみに新薬の開発には多くの費用や時間がかかるとお話ししましたが、その開発期間は10年以上、そして費用は数十億から数百億かかると言われています。
今回、ご紹介する企業は「MSD」という米国の企業です。この企業も例に漏れず、合併を経験している企業になります。
<MSDの歴史>
MSDは、2009年にMerck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.とシェリングプラウ社が統合した企業です。
シェリング社の起源は1851年にアーンスト・シェリング博士がドイツで医薬品の製造販売を行ったことに端を発します。
一方、Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.は元々、メルクグループ(日本法人はメルクセローノ株式会社)の米国子会社としてジョージ・メルクが、1891年にMerck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.を設立したのが始まりです。
Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.はその後、第一次世界大戦中に米国政府に接収されて以来、メルクグループとは独立して発展していきました。1899年、Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.は、医師薬剤師向け医学書「メルクマニュアル第一版」が出版されました。この書籍は薬剤に関するバイブルとして、現在では17カ国語に訳されています。
1944年、Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.の研究者と米ラトガース大学が協力してストレプトマイシンの発見をもたらし、同年にコルチゾン複合体の合成にも成功しました。さらに、その11年後にはシェリングの研究者がコルチゾンからプレフォニゾンの合成に成功し、20世紀半ばで最も重要な医薬品の進歩と称されます。
1953年、Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.は、米フィラデルフィアを拠点とするShaep&Dohmeと合併します。
1963年、Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.が世界初のはしかワクチンを発売、その4年後、モーリス・ハイルマン博士がおたふくかぜのワクチンを開発しました。開発した、おたふくワクチンは博士の娘の喉で培養したものとされています。
1971年、シェリング・コーポレーションとプラウ・インクが合併し、シェリング・プラウ社が設立されます。そして2007年にはさらに、オランダのオレガノン・バイオサイエンス社と統合します。
別の道を歩んできたMerck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.とシェリング・プラウ社は2000年に合弁会社を設立していましたが、その後の2009年に両社が統合し、MSDとしてさらなる事業を展開していくこととなります。
<MSD(日本)>
MSD歴史でお話ししたように、MSDの前身であるMerck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.は元々、ドイツを拠点とするメルクグループの子会社でした。
そのため、本社のある米国ではMerck(メルク)というブランド名を使っていますが、日本も含め北米以外の地域においては、Merck Sharp and Dohme(MSD)もしくはMSD Sharp & Dohmeとして事業を行っています。
日本では、Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.の子会社であった萬有製薬株式会社とシェリング・プラウ株式会社が統合し、2010年10月にMSD株式会社(以下、MSD社)が誕生しました。
グローバルでの強固なパイプラインとそのネットワークを生かし、革新的な医薬品やワクチンを提供すべく事業を展開しています。
MSD社が提供している治療薬は不妊治療のみならず、がんや循環器領域、ワクチンや感染症など幅広い領域に渡っています。
避妊の目的で使われているマーベロン®21・28(デソゲストレル・エチニルエストラジオール錠)、排卵誘発のために用いられているフォリスチム®注50/75/150及びフォリスチム®注300/600/900IUカートリッジ(フォリトロピンβ(遺伝子組換え)注射液)やガニレスト®皮下注0.25mgシリンジ(ガニレリクス酢酸塩キット)の製造販売元となっています。
<MSDと不妊治療>
上記にも書いた通り、MSD社は不妊治療領域において次の不妊治療向け製剤を販売しています。
マーベロン®21/マーベロン®28
(デソゲストレル・エチニルエストラジオール錠)
フォリスチム®注50/フォリスチム®注75/フォリスチム®注150
(フォリトロピン β(遺伝子組換え)注射液)
フォリスチム®注300IUカートリッジ/フォリスチム®注600IUカートリッジ
フォリスチム®注900IUカートリッジ
(フォリトロピンβ(遺伝子組換え)注射液)
ガニレスト®皮下注0.25mgシリンジ
(ガニレリクス酢酸塩キット)
排卵誘発剤については、医師の指導のもと自己注射することができる製品もありますので、患者さんにとってはより使いやすく、様々な選択肢が広がる治療薬と言えます。
MSD社は、革新的な医薬品及びワクチンを開発していくためには最先端の科学を発展させていくことが必要不可欠と考え、次世代の科学者や研究者の育成支援に継続的に取り組んでいます。
日本においてはサイエンス・スクールとして、小学生を対象に未来を担う子どもたちに科学の楽しさを伝え、一緒に軟膏作りにも挑戦しています。
また、人類の健康・疾病に関する生命科学分野の研究症例と人材育成を目指して2002年に万有生命科学振興国際交流財団を設立し、医学・薬学分野で次世代を担う若手研究者への研究助成や留学支援、シンポジウムの開催など学術振興のための積極的な取り組みを行っています。
さらにグローバルでは、進行すると失明にいたる可能性もある河川盲目症(オンコセルカ症)の治療・予防のため、治療薬の無償提供を行っています。
<関係リンク>
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。