銀座レディースクリニック石川院長に「不妊治療のお薬について」聞いてみました!

妊娠力向上委員会恒例のドクターインタビューの記事です。今回は銀座三越の隣のビルというたぶん日本で最もリッチな立地である銀座レディースクリニックにやってまいりました。

院長の石川先生は東京女子医大の不妊治療部門チーフを経験し、今のクリニックを4年前から継承し、不妊治療に取り組んでおられます。

院長の石川先生です!

院長の石川先生です!

ということで、今回は石川先生に色々と薬についてインタビューをさせて頂きました。

●最初に治療の中のいろんなツールがありますが、先生のその中での薬の位置づけ、どのように薬を捉えていらっしゃるかを教えてください。

石川先生(以下、I):不妊症においては、生活を改善してどうにかなること、例えば御夫婦の関係性を改善して、一緒に温め合って眠るという頻度を増やし、お互いのコミュニケーション、労わりあいとかが本来大切なはずであると思います。

また、月経困難症、生理痛とか、PMSの症状で困っている方においても、本当は、第一選択はお薬ではなくて、生活のリズムを整えてみるとか、運動とか、気晴らしとか、そういったことが本来優先されるべきだということに、私も賛成です。

でも、ホルモン剤にしても、他のお薬にしても、その効用や、副効用、副作用をきちんと理解して適切に使うと、例えば多嚢胞性卵巣症候群などで排卵障害がある方が、どんなに生活を改善しても簡単に排卵はしないところが、お薬をきちんと使うことですんなり排卵するようになったりします。

あるいは、生理痛で悩んでいる方も、痛み止めを使うことで快適に過ごせるというメリットがあります、ですから、特に私が行っているような不妊治療においては、ホルモン剤を適切に使うことが、治療効果を上げるために重要だと思うし、そこが専門医の腕の見せどころじゃないかと思っています。お薬がないと治療の効果が上がらない部分が大変たくさんあります。だから、切っても切れない関係にあると思います。

●副作用の面で、不妊治療で気をつけられていることはありますか。 

I:まず、お薬をご使用いただく女性のみなさんに、そもそもお薬には副作用が全くないということはありえないということを、よくご理解いただくように努めています。

その方に合ったお薬の量を用いて、その効果をきちんとモニタリングするために通院していただれば、決して深刻なことにはならないよう安全な使い方をして、そうであるということをご本人によく理解して、安心していただくことが重要じゃないかと思っています。

実際に治療を行っていて、ちょっとした薬を少し使っただけで、何か具合が悪くなったような、ものすごく体に負担になったことをしたように誤解されてしまう方がときどきいらっしゃいます。でも決してそうではないんだと、そう思い込まないように最初から説明していくことが重要ではないかと感じています。

しかし中には排卵することが必要で排卵誘発剤を使った時、適切に使ってとくに副作用がないのに、それが自分にとって負担なことをしたと誤解していらっしゃる人もいます。そもそも排卵がなければ妊娠しないということや、これで何の健康被害もなかったということをひとつひとつ説明していくことが、そういった患者さんにとっては必要だと思います。

インターネット上でも副作用についての誤解がありますね、「卵が早く減るんじゃないか」とか書かれていたり。

I:そうですね。そこは、不妊学級で説明するときや、調節卵巣刺激を始める前にも、「決して閉経が早くなったりはしない」ということをご理解いただくように努めていますが、そう思い込んでいらっしゃる方が本当に多いのも事実です。

日々の診療の中で、本来そういったところが心配されているということを私たちが汲み取って、悩まずにすむように解決してさしあげるという努力が必要なんだと日々感じています。

クリニックは三越の横のビルです。

クリニックは三越の横のビルです。

●先生が一番気になる副作用はどんなことですか。

I:不妊診療では排卵誘発を行うことが多いので、日々の診療で一番気をつけていることは、多胎予防などです。誘発剤は、足りなければ効果がないし、多ければ必ず効果があるが、逆に効き過ぎてしまうので、調節が非常に難しいのです。同じ女性に、同じ薬を同じ期間同じ量使っても、その方のその周期によって効果が違います。

同じ量を使ったのに排卵しなかったり、同じ量を使ったのに、ものすごくたくさんの卵胞が発育されてしまったりということが起きます。治療において、多胎の確率を上昇させたりすることで患者さんにご心配をかけないように気をつけています。

それから、やはりどの薬にもアレルギーがありますので、そこは正しくご理解頂いて、何か心配な症状があれば速やかに対応するようにしています。アレルギーに関しては、他のお薬でアレルギーの症状が出たご記憶やご経験がある患者さんには特に慎重に対応します。。

排卵誘発剤はアレルギーの可能性が低い薬剤の一つだと思いますが、併せて女性ホルモンのお薬や黄体ホルモンのお薬を使用したりすることがありますので、気をつけて説明して対応しています。

●先生が新しい薬を採用するときに気をつけていることを教えてください。

I:一番大事なことは、そのお薬が患者さんにメリットがあるか、つまり、従来あったお薬よりも使いやすさや安全性や効果にメリットがあって、コスト的にも釣り合うかということです。私はEBM(evidence based medicine:根拠に基づいた医療をする)を重要視しているので、日本国内にも、国際的にもエビデンスがあることを踏まえない限り、安易に新薬に手を出さない主義です。他院での使用経験、使用成績が公表される時代ですので、それらが大変参考になります。

●不妊治療は他の診療科に比べて、お薬の種類が少ないですよね。先生たちが業務をされる上で、お薬について考えるよりも、高度生殖医療の方に意識が行くものなのでしょうか?

I:業務の中で大部分を占めるのは、診療、検査や高度生殖医療なのですが、患者さんとの会話において、お薬を使う場合には、お薬の説明や注意をする会話の率は高いです。

お薬を使わない場合もありますが、何らかのお薬を使われていらっしゃるかたが多いので、他の人の経験談を聞いて「私には排卵誘発剤はいらないんですか?」というような質問がよくありますので、お薬について解説する場面は結構多いと思います。

●患者さんとの会話の中で、患者さんが簡単に理解できるようなツールや、他の先生が使っているうまい言い回しがあると、とても助かるということですか。 

I:そうですね。常に模索しているし、自分でも作ったりしています。やはり画一的に行かない部分ありますが、もう少し便利なツールがあったり、患者さんがわかりやすくなるものがあるといいんだろうなと思っていて、努力しなければいけないと思います。

ただ、きちんと明文化しづらい部分もあります。紙に表現してしまうと、「じゃあ、それだけですね。書いていなかったから、これは違うんですね」となってしまう可能性もあります。すべて網羅して、薬品の説明書みたいになにからなにまで書くかというと難しいですよね。重要でない部分にウエイトがいってしまったり、本来大事な点から大きくはずれてしまう危険性もあるので、難しいですね。

コミュニケーションはすべてそうなのですが、患者さんの心に最終的に残して欲しいところをどう残していくかというところに関わってくると思います。会話の中で、限られた診療時間の中でご理解頂くとなると、キャパシティが決まっていますので重要なことにフォーカスしたいということです。

●製薬企業のMRの活動についてどのように思われていますか?

I: MRさんが教えてくださったり、資料をくださったりすることをきちんと理解して新しい情報に疎くならないようにしていかないといけませんし、他の病院のことなども教えてくださるので助かっていますのでMRさんから提供される情報はウエルカムだと思っています。

●サプリメントの話をお聞かせください。

I:患者さんが食事の話とか、生活の改善の話をされるときは大きく3つがあり、1つ目は検査で異常値が出たとき、特に精液検査で異常値が出たときです。それも深刻な異常値ではなく、ちょっとした異常値、ちょっと平均を下回る時などです。2つ目は、AMHが平均を下回っていたとき、そして3つ目は、残念ながら1周期の治療がうまくいかなくて、次の周期の治療方針について話をするときです。

日本の患者さんはとても真面目な方が多くて、自分もなにかしたい、自分にできることはないのか、生活を改善することはできないのかと取り組まれる方が多いのです。それは、とてもいいことですが、本当はお食事やサプリメントではなく、夫婦の会話を増やしたり、ゆっくり話し合ったり相談したり、楽しいことをしたり、一緒に寝てくださいと思いますが、みなさんどちらかというと、何かを食べたい、何かサプリメントをとりたいという方が圧倒的に多いのが事実です。

例えば、育毛や、背が大きくなりたい、バストを大きくしたい、美肌になりたいとか、簡単にはできないけど、ぜひとも達成したいと思う悩みに対しては巨大な市場があります。そういうのをスマホでいろいろ見られる時代になり、「これは妊活サプリです」などというのを目にすると、一般の方の感覚だと、「お薬は不安で、副作用が多くて負担になる。でもサプリは無害なんじゃないか」と思って、効果が実証されていなくても安易に取り入れてしまう傾向があるといえるでしょう。私自身もそうじゃないと言い切れません。

しかし一部の妊活用のサプリにはプラセンタやクランベリーのエキスなど本来全く効果がないものが入っていて、それがあたかも効果があるように誤解されている状況もあります。

成長ホルモンや抗酸化作用のある物質などは効果がある可能性が指摘されています。そういうものが注目されて、本当に不妊治療に効果があったら使いたいのはやまやまですが、私がサプリメントを使わない理由は医学的に効果が立証された不妊治療用のサプリメントはないからです。

それに原点に立ち返ってみると、妊娠している女性と妊娠しなかった女性は、食生活や運動習慣に差はありませんし、出産率の高い国々の女性の生活習慣を考えてみても、実はサプリメントは関係ないということが明らかだと思います。

代替療法としては、漢方の先生に漢方のお薬を処方していただいたり、リラックスできるなら、鍼治療とか、ヨガをやってみることなどは、推奨できると思います。しかし

サプリメント類は分類では食品とは言え、かなり薬寄りの宣伝をしていますよね。事実以上の効能をうたうのは良くないことだと思います。

サプリメント

●まとめ

今回は薬のお話をお話し頂こうと参りましたが、それ以上にサプリメントの話で盛り上がりました。先生のおっしゃる通り、今、不妊治療の分野だけではなく、多くの医療分野でサプリメントを使われている現状を見ると、どう選んでいくのかというのは必要な知識なのだろうなあと思います。

石川先生のようにエビデンスに基づく薬剤の使い方というのは常に学び続けていくという姿勢がないと出来ない事です。そういう意味においては自制の意味も込めて、常に目を配りながら薬や治療について取り組んでいくという覚悟を見たような気がします。

診療の合間のお忙しい中、取材を受けて頂いた石川院長先生にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

<関連サイト>
銀座レディースクリニック
http://www.ginzaladies.com/

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