月経と貧血と薬について
思春期を越えた女性なら経験したことのある月経とは、約1ヶ月ごとのサイクルで子宮内膜が剥がれ落ち、体外へと排出される現象です。
そもそも、子宮内膜とは受精卵を迎えるベッドのような役割を担っているのですが、これは毎月新しいものへと作りかえられます。従って、受精しなかったあるいは着床まで至らなかった場合は不要となり、月経が起こるのです。
●正常な月経とは?
月経にまつわる話は、なかなか他人と共有する機会がないですよね。そのため、果たして自分の月経が正常であるかどうか、判断しにくいところもあります。
月経時の出血量は50〜150mlと個人差もありますが、一般的には多い日で2時間に1度、生理用品を取り替える範囲内の量であれば問題ないとされています。
●月経と貧血の関係は?
月経で毎月、一定量の血液を排出する女性は、男性よりも貧血になりやすい傾向があります。特に、月経前および月経時はその傾向が強く、身体を巡る血液が子宮へと集まることで他臓器、そして脳への血液量も減ってしまいます。ですが、月経の終わりとともに、貧血も軽減されていくのが特徴です。
また、一般的な出血量を超えることに加え、月経期間の長期化や血の塊が何度も出るなどの症状を伴う過多月経の場合も、貧血を引き起こす要因となります。過多月経が起こる背景には、ホルモンバランスの崩れや子宮に係る疾患を抱えていることが挙げられ、前者は機能的過多月経、後者は器質的過多月経と呼ばれています。
●月経時の貧血に対する予防策は?
一時的なものとはいえ、月経時の貧血は当事者にとって辛いもの。これを解消するためには、やはり食生活が基本となります。無理なダイエットや偏った食生活は禁物です。特に、私たちの身体は鉄を作り出すことができません。そのため、食物から摂取する必要があるのです。
摂取する鉄には2種類あり、吸収率の良い動物性食品に含まれているヘム鉄と、それよりも吸収率が10〜15%ほど下がり、植物性食品に含まれている非ヘム鉄があります。非ヘム鉄であっても、動物性タンパク質やビタミンCと一緒に摂取するなど工夫をすることで吸収率UPが期待できます。
ちなみに、お茶やコーヒーの過剰摂取は吸収率を下げてしまうので、ほどほどにしましょう。
*ヘム鉄を含む食品
レバー、いわし、かつお、あさりなど
*非ヘム鉄
のり、わかめ、ひじき、切り干し大根、大豆製品、小松菜など
この他、身体を温めて血行を良くしたり、鉄分を含むサプリメントを服用するなど自分で改善できることもあります。
しかし、貧血がひどい場合や器質的疾患などがある場合は医療機関の手を借りましょう。
特に、機能性過多月経の場合、黄体ホルモン剤やピルなどの薬剤でホルモンバランスを整え、月経量を減らす治療も有効です。避妊効果もあるミレーナは子宮内に挿入する器具で、5年間に渡って黄体ホルモンの効果が持続させることができます。
また場合によっては、男性ホルモンを投与することで月経量を抑える方法も選択されます。
一方、器質性過多月経では、当然のことながら潜んでいる疾患を治療することが先決です。
その他、対処療法として造血剤を投与することもあります。処方される経口薬は、クエン酸第一鉄ナトリウムや硫酸鉄といった鉄剤が一般的です。
しかし、鉄剤は時に、胃腸症状や吐き気などの副作用を引き起こすこともあります。続けることで気にならなくなることもありますが、耐えられないほど辛い場合は医師に相談しましょう。経口薬に代わり、鉄分を注射することもできます。ですが、注射は連日投与の必要がありますので、通院による煩わしさや侵襲性が高いなど患者さんの負担はより大きくなります。
<PMDA情報>
子宮内黄体ホルモン放出システム
製品名:ミレーナ®52mg
一般名:レボノルゲストレル放出子宮内システム
効能効果:避妊、過多月経、月経困難症
鉄剤(経口薬)
製品名:フェロミア錠®50mg/フェロミア®顆粒8.3%
一般名:クエン酸第一鉄ナトリウム製剤
効能効果:鉄欠乏性貧血
鉄剤(注射剤)
製品名:フェジン®静注40mg
一般名:含糖酸化鉄注射液
効能効果:鉄欠乏性貧血
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