子宮筋腫について~治療法と薬剤について
子宮筋腫は頻度の高い疾患であり、決して珍しいものではありません。大きさも症状も多岐に渡ることから、全てが治療対象とはならずに筋腫の大きさや症状の程度、そして妊娠を望んでいるかどうかによっても選択肢は異なります。
具体的には、筋腫が小さかったり出血や圧迫などの症状がひどくなければ、経過観察で続けていきます。
筋腫はエストロゲンの影響を受けるので、エストロゲン量が低下した閉経後は筋腫も小さくなります。そのため、閉経が近く、今後は大きく成長しないと判断されれば、引き続き経過をみていくこともあります。
一方、子宮筋腫の種類別にみていくと、子宮筋層や子宮の外側に筋腫ができる筋層内筋腫や漿膜下筋腫よりも、内側に成長していく粘膜下筋腫のほうが小さい筋腫でも症状が強く出ることが多いようです。また、不妊症を招くことも多いので妊娠希望であれば、手術を行って筋腫を取り除くことになります。
●子宮筋腫で使われる薬剤
《非ステロイド性抗炎症薬》
痛みや炎症を抑えることで、子宮筋腫に伴う症状を緩和させます。
継続的に服用するというよりも、月経時に頓服として利用するなど一時的であればあまり影響はありませんが、場合によっては胃腸障害が出ることがあります。
《ホルモン剤》
▶︎GnRHアゴニスト
GnRHアゴニストを用いることで性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌、およびエストロゲンの分泌を抑制する方法です。症状を和らげるだけではなく、筋腫自体の成長も抑えることができます。
GnRHアゴニストには点鼻薬と注射剤がありますが、どちらを用いた場合であっても、エストロゲン低下により閉経状態を作り出すためイライラ感やほてり、骨粗しょう症を招くことがあります。
また、手術を実施する場合においても出血量を減らす目的で、あらかじめ手術前に投与しておくこともあります。
GnRHアゴニストの詳細については、以前ご紹介したこちらを参考にしてください。
不妊治療にも子宮内膜症治療にも使われるGnRHアゴニストってどんな薬なの?
▶︎ピル
中用量や低用量のピルを服用することで月経や排卵が抑えられ、月経量を軽減させることができます。また、ピルが子宮内膜の増殖を抑制することで、プロスタグランジンの産出も低下することから痛みも少なくなります。
飲みやすく使いやすいピルですが、残念ながら筋腫自体を小さくする効果は持ち合わせていません。
ピルの詳しい紹介については、こちらをご覧ください。
不妊治療にも使われるピルってどんなお薬なの?
《貧血剤》
子宮筋腫は多量の出血を伴うことがあり、貧血状態を引き起こしているときには鉄剤が処方されます。
クエン酸第一鉄ナトリウムやフマル酸第一鉄などの薬剤があり、一緒に鉄の吸収をよくするビタミンCをすすめられることもあります。
継続的に投与することで貧血は改善されますが、食生活を見直していくことが大前提です。
鉄剤は製薬会社から多くの種類が販売されています。ほんの一部になりますが、こちらに掲載しておきますので参考にしてください。
○一般名
クエン酸第一ナトリウム
○フェロミア錠50mg/フェネルミン錠50mg など
○用法用量
通常星人は、鉄として1日100mg〜200mgを1〜2回に分けて食後経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
○効能効果
鉄欠乏性貧血
○使用上の注意
消化性潰瘍や慢性潰瘍性大腸炎、発作性夜間血色素尿症の場合は、病態が悪化することがあるので慎重投与となっています。
また、投与中は過量投与とならないよう定期的に血液検査を実施していきます。
○副作用
嘔吐や胃痛などの消化器症状が主な副作用になります。
その他、過敏症として発疹があらわれることがあります。
<参考:PMDA情報>
一般名:クエン酸第一鉄ナトリウム
製品名
フェロミア錠50mg
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/300220_3222013D1059_1_03#CONTRAINDICATIONS
フェネルミン錠50mg
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/270161_3222013F1130_2_03#CONTRAINDICATIONS
● 手術療法について
子宮筋腫の手術には子宮を全部取る根治手術と、筋腫だけ摘出して子宮を残す筋腫核出術があります。筋腫の大きさや出血や他臓器への圧迫状況、そして妊娠を希望するかどうかによっても選択肢は異なります。
子宮筋腫があることで妊娠に不都合が生じている場合には、筋腫のみを切除する筋腫核摘出術を選択します。
一方、子宮全摘術は、子宮ごと全部摘出する根治治療になります。子宮が取り除かれるので筋腫の発生を防ぐとともに月経もなくなります。ですが、女性ホルモンは卵巣から分泌されますので、更年期障害を招くことはありません。
手術には開腹して行うものと、子宮腔内または腹腔内をモニターに映し出して施術を行う子宮鏡下手術、腹腔鏡手術があります。後者の2つは傷が少なく身体的負担も軽減されますが、開腹する方法と比較して手術時間が長くなる傾向があります。
いずれの場合においても、これからのライフスタイルや妊娠希望の有無などを考慮しながら医師とよく相談し、納得して治療法を決めていくことが大切です。
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