黄体ホルモン剤「ルティナス膣錠」とはどんなお薬?
今回ご紹介する薬剤は2014年9月に国内で承認された新薬、黄体ホルモン剤「ルティナス」です。
不妊治療を進めていく中で繰り返された、卵巣への刺激や採卵は黄体機能の低下を招き、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌低下につながります。そこをフォローするべく黄体ホルモンを外から補充し、受精卵の着床や妊娠の維持を図ることで妊娠率を向上させるのが黄体ホルモン剤です。
これまで、黄体ホルモン剤は注射剤や経口薬などの剤型が販売されてきましたが、膣座薬での国内承認はルティナスが初となります。
この膣座薬という剤型は、日本ではあまり耳慣れないかもしれません。しかし、海外の不妊治療では、主流となっており広く認知されているのです。それを裏付けるかのように、海外では2007年に承認を受けて以降、36カ国で承認され広く使われています。
膣座薬が重宝されている理由のひとつとして、解熱目的で使用される坐剤のように肝臓での代謝を受けにくく、肝臓に負担がかからないということがあげられます。さらに、ルナティスは発泡性を有しているので、アプリケーターで膣内に挿入後は速やかに溶けて吸収されるという特徴も持ち合わせています。
そして最も期待されている点は、ルティナスは国内で初めてART時の黄体補充の適応を受けた薬剤であるということです。
このように満を持して登場したルティナスですが、承認以前での不妊治療において、黄体ホルモンの補充が必要となった場合はどのように対応していたのでしょうか?
もちろん、以前はARTにおける黄体補充の適応がある薬剤は存在しません。そのため、医療機関が独自の判断で経口薬や注射剤を処方したり、海外から個人輸入して使っていました。また、場合によっては独自に膣座薬を作って患者さんに投与しているケースも見受けられました。
そのような部分が解消されるという点においても、ルティナスは非常に画期的な新薬だといえるでしょう。
●メリット
・ 挿入後、速やかに発泡して吸収され、安定した血中濃度が得られる
・ 天然のプロゲステロン製剤を使っているので、安全性が高い
・ 専用のアプリケータを使って挿入するため、手を汚すことなく清潔に挿入ができる
・ 国内初のARTにおける黄体補充の適応が認可された薬である
・ 注射剤のように連日通院の必要がなく、痛みから生じる身体的苦痛も緩和される
●デメリット
・ 1日3回程度の挿入が必要なため、職場等での挿入が必要となる場合がある
・ 挿入後におりものが出ることがあるので、おりものシートが必要となる
(独自に作成された膣座薬のときも同様です)
・ 価格が高いため、トータルコストがかかる
<一般名(成分名)>
プロゲステロン膣錠
<製品名>
ルティナス膣錠100mg
<用法用量>
プロゲステロンとして1回100mgを1日2回又は3回、排卵日(又はホルモン補充周期下での凍結胚移植ではエストロゲン投与により子宮内膜が十分な厚さになった時点)から最長10週間(又は妊娠12周まで)膣内に投与する。
<効能効果>
生殖補助医療における黄体補充
<使用上の注意>
血栓ができる可能性があるため、血栓性静脈炎や網膜血栓症などの症状がある場合、過去にかかったことがある場合は使用できません。
また、以下の方は医師に必ず伝えて頂き、確認をしてください。
・ てんかんやうつ病にかかったことがある方
・ 片頭痛や喘息にかかったことがある方
・ その他、持病を抱えている方
<副作用>
主に報告されている副作用は頭痛、傾眠、性器出血になります。
そのほか、重大な副作用として血栓塞栓症も報告されているので、このような症状が現れた場合には、服用を中止して直ちに医師へ連絡してください。
<PDMA情報>
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/247770AH1025_1_02/
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2015年 9月 28日トラックバック:なぜ膣坐剤が必要とされているのか?
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