不妊治療とホルモン(1)~FSHって? なぜ検査が必要で、薬にもなっているの?
不妊治療においては様々なホルモンの名前が出てきます。なぜならば人間の生殖はホルモンが深くかかわっているからです。
ホルモンとは「生体内の内分泌器官でつくられ、体液を通じて他の場所に運ばれて特定の細胞や組織、器官の活動に影響を及ぼす物質の総称。微量でも作用を及ぼすのが特徴です。」焼肉のホルモン焼きとは違いますので、お間違えのないよう(笑)。
さて、今回は不妊治療で最も重要なホルモンの1つ「FSH(卵胞刺激ホルモン)」について解説をしてまいります。
●FSHとは?
卵胞刺激ホルモン(:Follicle stimulating hormone, FSH)下垂体前葉にて合成・分泌されるホルモンである。卵巣内でFSHは未成熟の卵胞の成長を刺激し成熟させる。また、エストロゲンの生成の促進や月経周期のコントロールの働きを持つ。
男性において、FSHは精巣の精子形成に作用する。また、精巣の生育にも関わる。不妊治療においてはこのFSHの値を見ることにより、卵巣の状況が分かる。
正常値 は下記の通りです。
基礎値を調べる場合には月経3日目~7日目に測定が必要になります。
<女性>
卵胞期(基礎値)3.5~12.5
排卵期4.7~21.5
黄体期1.7~7.7
閉経期25.8~
検査値が高い場合、下記の疾患が疑われます。
排卵障害(月経不順) 卵巣性無月経(早発)閉経
検査値が低い場合、下記の疾患が疑われます。
排卵障害(月経不順) 下垂体機能低下症
<男性>
2.9-8.2(mIU/ml)
検査値が高い場合、下記の疾患が疑われます。
高ゴナドトロピン性性腺機能低下症(原発性性腺機能低下症)
クラインフェルター症候群
非閉塞性無精子症(NOA)
検査値が低い場合、下記の疾患が疑われます。
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(MHH)
●不妊治療薬としてのFSH(卵胞刺激ホルモン)
通常はカラダの中で出来るFSHを製薬技術で作り出して、お薬として製剤化したものがFSH製剤となります。
FSHの卵胞発育作用を期待して注射剤として投与される薬剤はhMG製剤とFSH製剤があります。その詳細は以前、こちらのサイトで紹介を致しました。
ゴナドトロピン製剤:FSH製剤(排卵誘発注射剤)ってどんなお薬なの?
FSH製剤も尿から抽出したフォリルモン注と遺伝子組み換え技術によって作られたゴナールF注とフォリスチム注と2つの製法の違いがあります。
日本の場合、排卵誘発や一般排卵の時に卵胞発育の用途でhMG製剤を使うことが多いです。それは、hMG製剤はFSHとLH(黄体化ホルモン)が含まれているからです。
FSH製剤はLHが含まれていないので、患者さんによって、卵胞の発育が悪くなるケースがあるのです。
FSH製剤のメリットはLHが含まれない事で卵の質が良くなること、そして尿由来の夾雑タンパクが少ない、もしくはまったくないので、注射時の痛みやアレルギーが少なくなること、そして多嚢胞卵巣症候群のような卵巣に小さな卵胞をたくさん持つような場合にはこちらが第一選択になるということです。
先生方はこのように患者さんの身体の状況に合わせて、hMG製剤やFSH製剤を投与して治療に活かしているのです。
特に不妊治療を得意にしているドクターは毎周期、患者さんの身体の状況や卵巣の状況は変化していることを知っているので、毎回オーダーメイドして処方製剤やその投与量を微調整しているのです。
そういう部分も徐々に理解してくると、先生の治療の内容が理解しやすくなるかと思います。
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