レディスクリニックコスモス院長 坂本康紀先生インタビュー(高知市)

今回は不妊治療専門施設では初の高知取材となるレディスクリニックコスモスの坂本康紀院長先生にお話をお伺いすることができました。

初めての土地なので、どんな地域特性があるのか?高知ならではの特徴があるのか?といった興味を抱いての訪問となりました。初対面の池上に対し、真摯かつフレンドリーに、そしてとても濃いお話を展開して頂きました。

それでは、そのインタビューの様子をどうぞ!

●ドクターになられたきっかけについて教えてください。
出身は土佐高校なのですが、高校二年生くらいまでは普通の工学系へ行くつもりでした。しかし、高校三年生の時にNHKで「赤ひげ」というテレビドラマが放送されていたのを見て、医者に興味を抱きました。周りに医学部志望が多かったということもあり、学力も伴っていたので受けてみようかなと思ったのがきっかけですね。

高校三年生の11月までバンド活動をしていて文化祭にも出場していましたので、そこから3か月ほど必死で勉強しました。当時は、センター試験がありませんでしたので、2日間の試験を経て徳島大学へ合格することができました。

●数ある診療科の中で、なぜ産婦人科を選ばれたのでしょうか。
臨床研修で婦人科へ行ったときに、お産を見学する機会がありました。その時のお母さんの顔がすごく素敵だなという印象がありまして。赤ちゃんを産んだ後のお母さんというのは、すごくいい表情をされますので産婦人科っていいなと感じたことが一つのきっかけです。

また、その時の医局長先生が人間的に魅力だったということも選んだ要因の一つですね。

クリニック外観です。駐車場も完備です。

●その当時の徳島大学は、生殖医療に力を入れていたのでしょうか。
入局した当初は、教授がいませんでした。ちょうど、入局して2年目に、生殖医療の分野では有名な方が京都大学から講師でいらっしゃって教授になり、体外受精に取り組まれることになりました。

私は体外受精のメンバーではなく、腫瘍の研究に携わっていて全く関係がなかったので、実は大学時代、ARTに関しては外から見ていただけなのです。ですが、立ち上げの頃から採卵や培養までずっと横から見ていましたね。

そういったこともあり、当時親しかった先生に夜中の採卵時に呼び出されたこともあったくらいです。

●どのタイミングで生殖医療に携わるようになったのでしょうか。
そうこうしているうちに、大学から離れてローテーションでいろいろな病院をまわっていたのですが、当時の国立高知病院にいるときクリニックを一緒にやろうと誘われたことがあります。

誘ったのは、高知県にサニーマートという小売業をしている会社の娘婿で尚且つドクターの方です。私の家内の父親がそちらの会社で重役をしていたという関係もあって、私もクリニックに参加することになりました。

主に、健診中心のクリニックだったのですが、しばらくして将来のことを考えるようになりました。大学へ戻って研究をするという選択肢もあったのですが、そういったタイプではないので独立しようかと。

独立にあたって、婦人科だけでは経営的にも将来的にも難しいのではないかと感じ、体外受精も取り入れようと考えました。それが、ちょうど2001年の頃です。

そうはいっても、これまで生殖医療に携わってきませんでしたので、徳島大学の生殖医療に詳しい先生にお願いして体外受精の勉強をさせていただき、細かな技術的な部分などを学ぶ機会を作りました。培養に関しては、大学時代にがん細胞の培養などを行っていましたので、そちらの知識を生かすことができましたね。

受付の様子です。

●クリニック名の由来について教えてください。
まず自分の名前をつけたくないというのがありました。

この場所へ移る前は、ビルの中で診療を行っていたのですが、当院より先にビル内に入っていた診療所に「菜の花診療所」というクリニックがありました。それを見て、花の名前をつけるのも良いなと感じたのがきっかけです。

自分の好きな花を改めて考えてみると、コスモスが好きだと気付きまして。コスモスは宇宙という意味合いがありますよね。女性の体というのは宇宙みたいなものですし、コスモスの花言葉が純潔ということも知り、レディスクリニックコスモスという名称にしました。

とても可愛らしい名前ですし、コスモスの花言葉の意味も不妊治療に合っていると感じています。

●受診される方の年齢層は、変化してきていますか?
以前よりは、明らかに高くなりました。開院した当初は20代、30代前半までが中心でしたが、今は40代が多いですね。

当院で治療中の7割は、40歳以上ではないでしょうか。

40代、50代の患者さんの場合は、最初にARTを実施するかどうか確認しています。一番高度な技術を提案し、その次にタイミング法を提案するといった流れになります。

もちろんARTに取り組んだとしても、これくらいの確率しか妊娠することができないということも伝えますし、それでもやりたいということであれば、納得できるまで付き合うようにしています。

待合室の様子です。

●治療へのこだわりなどがあれば教えてください。
患者さんが、満足しているかどうかを一番大切にしています。
ただし、満足するという意味は、患者さんが言いたい放題で何でもやるということではありません。当院は、厳密に学会の方針に沿っていますので現在はPGSやPGDなどは行っていません。

その中で、患者さんが納得のいく治療をし、それ以上の認められていないことを望まれる場合は他院への紹介も視野に入れています。認められている範囲内で、満足できる治療を目指していますね。

中には、都心の病院へ行きたいから紹介状を書いて欲しいと言われることもあるのですが、それが一番さみしいですね。確かに、都会の方が優れている部分もあるのかもしれませんが、県内で完結できるよう技術レベルを上げる努力を日々、行っています。

培養室です。

●こちらのクリニックは胚培養士も6名いらっしゃいますし、症例数も非常に多いですよね。
胚培養士は採卵前など、患者さんと面接をするようにしていますので、何かあったときには胚培養士に相談するということもあるようです。胚培養士の人数を増やしているのは、彼らの負担を減らすということが目的ですね。

●現在、課題だと感じられていることがあれば教えてください。
看護師も含めて、まだ人数が十分でないところがあります。日曜祝日は採卵できないといった実情があるので、もう少し患者さんに合わせた治療をしたいと思っています。
ただ、それにはドクターも含めて人を増やす必要がありますね。

また、妊娠率を上げたいということはもちろんなのですが、どういったことをすれば患者さんに満足してもらえるのかを考えなくてはいけないなと感じています。

●ドクターの立場として、チーム医療で気をつけられていることがあれば教えてください。
仲が良い悪いは、人が集まればどうしても出てきてしまうのですが、ミーティングなどを通して意思疎通を図るようにしています。
不妊治療というのは自分なりのやり方を持っている場合もあるので、そこを統一し、お互いに共有しながら業務に取り組んで行くことが大切ではないでしょうか。

採卵室です。

●クリニックとして、今後のビジョンがあればお聞かせください。
生殖医療に関しては、今までやってきたことをさらに進めていきたいと思っています。確実に、生殖医療を進めて全国レベルの診療を行い、患者さんに満足感を持ってもらえるような治療をしていきたいですね。

また、もっとドクターを増やすことが前提にはなるのですが、更年期も含めた女性医学にも取り組んでいきたいと感じています。不妊治療を卒業された方や、不妊になる前の患者さんを対象に、STDや子宮頸がんなど啓発などもしていきたいですね。

●最後に伝えたいメッセージがあればお願いいたします。
不妊治療や不妊に関する知識を正確に持った上で、自分の将来のことについて考えて欲しいと思っています。

これは医会の言葉でもあるのですが、「婦人科のかかりつけをつくりましょう」と。何かあった時に相談できるようなかかりつけを、若い時からつくって女性としての将来を見つめていきましょう。

不妊治療に関しては、年齢が高いからやめたほうがいいのでは、といったことは基本的には言わないようにしています。本人が納得するまで治療を行うということが大切だと感じていますので。

それはなぜかというと、妊娠するための治療もあるのですが、妊娠を諦めるための治療もあると思っているからです。「ひょっとしたらあの時に妊娠していたかもしれない」と60歳くらいになってから思うのではなく、「あれだけやってきたのだから、仕方ないよね」と言えるような治療をして欲しいですね。

そのため、50歳でも卵が取れる可能性がある限りは治療してあげたいと思っています。

もちろん、妊娠する期待を持たせてはいけませんが、治療成績やかかる費用を知った上で、それでもやりたい場合は満足するまでやりましょうとお話ししています。

●まとめ
患者さんが納得できるような治療を提供していきたい、そんな思いが強く感じられるインタビューとなりました。

一方的に治療方針を伝えるのではなく、患者さんの立場や気持ちに沿った治療を行ってくれるクリニックですので、治療後も長くお付き合いすることができるのではないでしょうか。

坂本先生、お忙しい中、貴重なお時間とお話を頂戴しありがとうございました。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。

<関連サイト>
レディスクリニック コスモス
http://www.lccosmos.jp/index.html

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