不妊症の原因の1つと言われている月経困難症とその治療薬について
月経とは、女性が10代の頃に始まり閉経まで何十年と続くものですが、憂鬱に感じる方も多いことと思います。その理由として、手間や煩わしさもさることながら、月経痛いわゆる生理痛も一つの要因ではないでしょうか。
痛みの感じ方というのは個人差があります。ある人にとっては痛くとも、他の人にしてみれば気にならない程度ということもあります。とはいいながらも、中にはその痛みが度を越し、日常生活に支障をきたしてしまうケースもあります。
月経痛のために何もできず寝込んでしまうような状態は、月経困難症と呼ばれています。ただの月経痛と放置してしまってはいけません。裏には大きな問題が潜んでいることもあるのです。
● どのような症状があらわれるの?
非常に強い下腹部痛や腹痛が多く見られます。
また、場合によっては頭痛や腰痛を併発したり、嘔吐や貧血の症状を伴っていることもあります。さらにイライラや不安感が募り、塞ぎ込むことも少なくありません。
月経の度に重い症状が重なり、仕事を休んだり家事を中断したりといった影響が出ることもあります。
● 月経困難症の原因とは?
月経困難症は、大きく2つに分けることができます。
そのうちのひとつが、機能性(原発性)月経困難症です。月経のはじまりによく見られます。月経困難症のうち、大多数がこちらを占めます。
そもそも月経とは、受精卵を迎えるために厚肥した子宮内膜が不要となったため、体外へと排出される一連の流れを指しています。集まった血液を体外へ出す際に活躍するのが、プロスタグランジンという生理活性物質です。この物質には筋肉を収縮させる働きがあるので、子宮に存在する平滑筋を収縮させることで子宮内の血液を排出させることができるのです。
しかし、場合によってはこのプロスタグランジンが過剰に分泌されていることがあります。そのような場合は、子宮の収縮が強く促されることになり痛みが生じます。
さらにプロスタグランジンの厄介なところは、痛みの閾値を下げてしまうことです。痛みというのはある一定のラインまで到達して、初めて感じることになるのですが、この一定のライン自体を下げてしまう効果があるのです。
機能性月経困難症の発症割合を年代別にみてみると、出産を経験していない若年層が多いことがわかります。これは、出産前ということで子宮口がまだ狭く、血液が排出しにいのでより痛みを感じやすいという理由があげられます。
またこの痛みは、月経のはじまりに強く感じ中盤から和らいできます。このため、痛みは一時的であり、機能性月経困難症であるかどうか判断する一つの指標となっています。
月経困難症には機能性のほか、背景になんらかの疾患が潜んでいる器質性(続発性)月経困難症もあります。症状が機能性月経困難症よりも強く、月経中は痛みが和らぐ様子がありません。また、月経時以外でも痛みを感じることがあります。
機能性月経困難症よりも、こちらのほうが重大な問題を抱えています。決して、いつもそうだから大丈夫と自己判断することはやめましょう。
器質性月経困難症の原因として考えられる疾患は、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症です。いずれも放置しておくと不妊症に至る場合があるので、早期治療が必要です。
※ 子宮内膜症
本来、子宮内で増殖する子宮内膜組織が、卵巣や膣などそれ以外の場所にでき増殖するため、血液が溜まり、炎症や他臓器との臓器と癒着を起こす疾患です。
※ 子宮腺筋症
子宮内膜が子宮以外の様々な組織で生育、増殖するのに対し、子宮内の筋層に子宮内膜が入りこみ増殖する疾患です。繰り返すことで、子宮自体が大きく固さを増していきます。激しい痛みとともに、月経量も増加するのが特徴です。
※ 子宮筋腫
子宮の筋肉内に発生する良性の腫瘍です。
良性なのでそれ自体に害はありませんが、成長すると数十センチまで大きくなるので、痛みが強い場合や不妊の原因となっている場合には摘出することになります。
● 検査方法は?
検査方法として、まずは問診で月経の状態や初潮の時期、性交渉の有無などを確認します。さらに、ホルモン状態を調べるために尿検査や血液検査に加えて、内診や超音波検査などを行います。また、器質的疾患が疑われる場合はCT検査やMRI検査を行うこともあります。
● 治療
これは先に紹介した機能性、器質性のどちらに属するかによっても変わってきます。まず、器質性の場合は元になる疾患が存在しているので、こちらを治癒させることが先決です。場合にもよりますが、器質的疾患を治療することで症状の改善が見られることが多く見受けられます。
一方、機能性であれば軽症の場合、その痛みを緩和させる薬剤を服用することになります。よく用いられているものとして、非ステロイド性鎮痛薬(NSAIDs)のロキソニンやボルタレンがあり、薬局で手軽に購入されている方も多いことでしょう。
これらは、月経開始前に服用することがポイントです。そうすることで、より効果的に痛みを抑えることができます。
このほか、副交感神経の作用を抑えることで子宮収縮自体を穏やかにさせる、ブスコパンが用いられることもあります。収縮の動きが弱まることで痛みも和らげることができるのです。
痛みの程度が強ければ、低用量ピルが効果的です。ピルを服用することで子宮内膜が肥厚せず出血量も少なくなるので、必然的にプロスタグランジンの生成も抑えることができます。
ピルについての詳しい説明は、こちらで紹介していますので参考にしてください。
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不妊治療にも使われるピルってどんなお薬なの?
そのほか、月経痛は生活習慣の改善によっても効果が得られることもあります。規則正しい生活や食生活はもちろんのこと、夜更かしや過重なストレスは禁物です。もちろん、血液の流れが滞ってしまう冷えも大敵です。月経期間は、気持ちに余裕を持って穏やかに過ごしたいものですね。
現在は市販の鎮痛薬も多く、手軽に購入することができますが、強い痛みが続く場合や日常生活に支障が出る場合は早めに受診しましょう。
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