不妊治療薬を製造販売している製薬企業紹介シリーズ~富士製薬工業
病院で処方されるお薬には、実は2種類の呼び方があるということは意外と知られていません。
薬剤の包装シートには販売名(商品名)が表示されており、その製品を販売している企業が商標登録した、商品の名称になります。
一方、その商品がどのような有効成分を含むのかを表すための呼称が、一般名(成分名)になります。同じ製品なのに、違う呼称があると不都合がありそうな印象を受けますが、もちろんその背景にはきちんとした理由があります。
薬剤は世界中で処方されているので、一般名として世界共通の名前をつける必要があるのです。一般名が同一であれば、販売名が異なっていても同じ成分・効能効果を示す製品だと認識することができるのです。
ただし一般名が同一であったとしても、吸収率や飲みやすさ、効果の持続性などは製品ごとに異なり、各製薬会社の特色が出ています。
今回、ご紹介する企業は富士製薬工業です。
<富士製薬工業の歴史>
富士製薬工業株式会社(以下、富士製薬)は、1954年に富士薬品商会が設立されたことに始まります。
その後、1959 年には有限会社へと、1965年には株式会社へと変遷を遂げ、現在の富士製薬工業株式会社が設立されました。
1972年には副腎皮質ホルモン製剤「デキサン」を、1978年には抗生物質製剤を発売するなど、続々と製品を提供していきます。産婦人科領域においては、1982年に発売された体外診断薬を皮切りに、2008年には月経困難症治療薬「ルナベル」を発売しました。
2009年、テルモ株式会社と業務提携に関する協議開始ならびに資本提携を、2010年には持田製薬株式会社とバイオ後続品の共同開発に関する契約を締結して研究開発に意欲的な事業展開を行います。
さらに2012年、タイ最大の医薬品製造受託企業であるOLIC(Thailand)Limitedを子会社化します。
2013年、月経困難症治療薬「ルナベル配合錠ULD」を販売開始した他、「ルトラール錠」「クロミッド錠」など塩野義製薬株式会社が保有していた婦人科系の4製剤を、製造販売承認の承継および販売移管により販売開始してラインナップを拡充しました。
2014年、三井物産株式会社と資本業務提携契約締結します。
富士薬品は、優れた医薬品を通じて人々の健やかな生活に貢献するという理念を持ち続けながら、種々の変遷を通じて事業を拡大しています。
<富士製薬工業と不妊治療>
富士製薬は、女性のこころとからだをトータルサポートするべく、医薬品の開発・製造・安定供給に尽くし、女性医療分野のリーディング・カンパニーを目指しています。
ノーヴェルファーマ株式会社が開発し、国内において2013年に発売された月経困難症治療剤「ルナベル配合錠ULD」は、より重篤な副作用発現の低減を目的として開発された製剤です。「ルナベ®配合錠ULD」は、ノルエチステロン1mg/エチニルエストラジオール0.02mgの用量になりますが、この含有量で月経困難症治療剤として承認された薬剤は、世界で初めてとなります。
この他、黄体機能不全による不妊症治療向け製剤「ルトラール錠」や排卵障害や体外受精時に用いられる排卵誘発剤「クロミッド錠」「HMG筋注用」「フォリルモンP注」、子宮内膜症治療に使用される「ブセレキュア」「ナファレリール」は、不妊治療施設で広く用いられており、多くの人々の赤ちゃんを抱きたいという夢を叶えています。
さらに、疾病治療だけでなく、各種診断薬も取り揃えており、妊娠診断や排卵時期を測定するホルモン検査キットなども多くの医院で使用されています。富士製薬は、ジェネリック医薬品も豊富なランナップがあるので、不妊治療における薬剤選択の幅を広げてくれています。
上記にも書いたとおり、富士製薬工業株式会社はいくつかの不妊治療向け製剤を販売しています。
<経口剤>
●排卵誘発剤
クロミッド錠®50mg
(クロミフェンクエン酸塩)
●経口黄体ホルモン剤
ルトラール®錠2mg
(クロルマジノン酢酸エステル)
プロゲストン®錠2.5mg/プロゲストン®錠5mg
(メドロキシプロゲステロン酢酸エステル)
* ジェネリック医薬品:先発品はプロベラ錠2.5mg/ヒスロン錠5mg
●経口卵胞ホルモン剤
エストリオール錠1mg「F」
(エストリオール)
* ジェネリック医薬品:先発品はエストリール錠1mg/ホーリン錠1mg)
●月経困難症治療剤
ルナベル配合錠®LD
ルナベル配合状®ULD
(ノルエチステロン・エチニルエストラジオール)
●経口避妊剤
ファボワール®錠21
ファボワール®錠28
(デゾゲストレル・エチニルエストラジオール)
* ジェネリック医薬品:先発品はマーベロン21、28
ラベルフィーユ®21錠
ラベルフィーユ®28錠
(レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール)
*ジェネリック医薬品:先発品はトリキュラー錠21、28
<注射剤>
●卵胞成熟ホルモン(FSH)製剤
フォリルモン®P注75
フォリルモン®P注150
(精製下垂体性性腺刺激ホルモン)
●持続性卵胞ホルモン剤
プロギノン®・デポー筋注10mg
(エストラジオール吉草酸エステル)
●黄体ホルモン製剤
プロゲステロン筋注25mg「F」
プロゲステロン筋注50mg「F」
(プロゲステロン)
* ジェネリック医薬品:先発品はプロゲホルモン筋注用25mg
プロゲストン®デポー筋注125mg
(ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル)
* ジェネリック医薬品:先発品はプロゲデポー筋注125mg
●ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン剤
HMG筋注用75単位「F」
HMG筋注用150単位「F」
(ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン)
●ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン
注射用HCG3,000単位「F」
注射用HCG5,000単位「F」
注射用HCG10,000単位「F」
(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)
* ジェネリック医薬品:先発品はHCGモチダ筋注用3千単位/5千単位
/1万単位
<ジェル剤>
●経皮吸収エストラジオール製剤
ル・エストロジェル0.06%
(エストラジオール)
<点鼻液>
●Gn-RH誘導体製剤
ナファレリール®点鼻液0.2%
(酢酸ナファレリン)
* ジェネリック医薬品:先発品はナサニール点鼻液0.2%
ブセレキュア®点鼻液0.15%
(ブセレリン酢酸塩)
* ジェネリック医薬品:先発品はスプレキュア点鼻液0.15%
この他、造精機能障害が原因とされる男性不妊症には、次の男性ホルモン製剤が用いられます。
テストロンデポー筋注250mg
(テストステロンエナント酸エステル注射液)
* ジェネリック医薬品:先発品はエナルモンデポー筋注250mg
富士薬品工業
https://www.fujipharma.jp/
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