風疹と不妊治療とワクチンについて

今回は、不妊治療を始めようと思っている方、そしてすでに始められている方に今一度確認していただきたい、風疹にまつわるお話です。

みなさんは風疹にかかったことがありますか?
罹患したことがなくても、予防接種はしっかりと受けているでしょうか?

予防接種は受けているはず・・・と少しでも不安がよぎるのであれば、ぜひ自身の予防接種歴や罹患歴を確認してみましょう。
というのも、妊娠中の風疹は大切な赤ちゃんに思ってもみない障害を引き起こすことがあるのです。

Q.風疹とは?
ウイルスが原因となって発症する、急性ウイルス性疾患です。
罹患すると発熱やリンパ腫の腫れ、発疹や頭痛などの症状が現れ、幼少期よりも成人してからのほうが症状も重く、長引く傾向があります。

他の感染症についても言えることなのですが、風疹ウイルスに感染したからといって全員が発熱などの症状を呈するわけではありません。中には気づかず、知らないうちに周りへうつしてしまうこともあるので注意が必要です。

Q.風疹が胎児にもたらす影響とは?
大人がかかるだけでも、十分に重く辛い症状をもたらす風疹ですが、これが妊娠中となるとまた話は変わってきます。風疹ウイルスは時に、胎盤を通して胎児へと感染することがあり、先天性風疹症候群(CRS)といって赤ちゃんが身体的及び精神的な障害を負うことになる可能性があるからです。

では、妊婦が風疹にかかるとどのような障害が起こるのでしょうか。
つい数年前に国内で流行し、ニュースなどでよく取り上げられていたので耳にされた方もいらっしゃるかもしれませんが、先天性風疹症候群の3大症状には先天性心疾患、難聴、白内障があります。この他、低出生体重や網膜症、糖尿病や精神的発育遅延などがみられることがあります。

これらの障害は妊娠中の10ヶ月間、どの時点で罹患したとしても発症するのかというと、必ずしもそうではありません。
日本産婦人科学会によると妊娠20週までの罹患によって、胎児に様々な障害をもたらす可能性がありますが、これ以降であれば殆ど影響はないとされています。妊娠初期は、胎児が様々な器官を形成する大切な時期にあたるので、早ければ早いほど重篤な障害を招く恐れがあるといえるでしょう。

Doctor that hit the injection

Q.風疹への罹患を防ぐには?
先述したような胎児への影響を防ぐためには、風疹ワクチンの接種が基本です。

しかし、最近の報告ではワクチンを接種したとしても、後に風疹に対する抗体価の減少や消失がみられることがわかっています。そのため、接種済みだからといって100%免疫が獲得されるとは限りません。

そして、抗体がなく風疹ワクチンを接種することになった場合は、2〜3ヶ月間の避妊期間が必要となります。すでに不妊治療を始められているのであれば、一旦、治療を中断する必要がありますので、やはり妊娠を希望した時点で抗体価の検査をしておいたほうが安心でしょう。
ちなみに、検査方法は採血のみですので時間はかかりませんが、結果が出るまでに1週間程度かかります。

Q.風疹ワクチンは全員、接種済みなのでしょうか?
実は、ワクチンを接種していない空白の年代が存在します。

かつて風疹ワクチンは自然罹患によって免疫を獲得していた時代から、中学生女子にのみ集団接種をしていた時代、そして個別に医療機関で接種する時代を経て、現在のように乳幼児期への接種へと変化しています。
このちょうど制度移行の時期、具体的には昭和54年4月2日〜昭和62年10月1日に生まれた人は個別接種のため、全体的に接種率が低くなっています。 “きっとしているはず”ではなく、母子手帳を今一度確認して、予防接種歴をしっかりと確認しましょう。

また、これは女性ばかりに当てはまることではありません。
男性においても罹患することで、周りやパートナーへの感染を招くことになります。愛する人を守るため、不妊治療を始める前には出来れば一緒に医療機関を受診し、風疹の抗体価の検査しておくことをお勧めします。

<参考HP>
厚生労働省
風しん・先天性風しん症候群とは?
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/vaccination/about.html

日本産婦人科学会
風疹に関して、心配しておられる女性のためのQ&A
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20130625.html

国立感染症研究所
先天性風疹症候群とは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ha/rubella/392-encyclopedia/429-crs-intro.html

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