名古屋駅前クリニック大規模改装の意図とは?~浅田レディースクリニック 浅田院長先生インタビュー
今回は、昨年の5月に勝川、名古屋に続く第3のクリニックを品川に開院された浅田レディースクリニックの浅田院長先生にお話をお伺い致しました。
この度、名古屋駅前クリニックを大幅に改装されたとのことで、そのきっかけやクリニックへの影響などを教えていただきました。日本の不妊治療を牽引されていらっしゃる浅田先生ならではの素晴らしいお考えがつまったインタビューをどうぞご覧ください。
●名古屋駅前クリニックでは、3階をラボとオペ室へ、4階を診療エリアへと刷新しましたが、このように変えようと思われたのはいつ頃でしょうか
2年くらい前です。開業当初は、248坪の中にいかに全てを盛り込むかという発想のもとで作りました。どんなに紙カルテが増えても収納できるように、また、診察室も5センチ10センチ単位で考え、120%スペースを活用するよう設計しました。
待合室はあまり取っておらず、当初はPHSや携帯を患者さんに持っていただいて、待ち時間が長ければ一旦外に出てショッピングや散歩楽しんでいただこうと思っていました。しかし、そういう方は意外と少なく、さらに毎回、散歩するわけにいかないので、次第に院内で待つ方が多くなってきました。
以前は、勝川クリニックと名古屋駅前クリニックで差が出ないよう、新規の患者さんの人数を制限していました。ですが、名古屋駅前クリニックを初めて受診する方の待ち期間が半年以上になってしまったことで、他院を選択される方の割合も増えてきました。
そのため、新しい患者さんの受け入れ態勢を整えようと動き出したところ、どんどん待合室のスペースが減り、立って待っている方も出てきて患者さんの増加とともに苦情も増えてきました。
いずれ、待合室を広げなくてはいけないという考えがありながら、途中に品川クリニックの開院が控えていたので私自身、ずっと設計に携わってはいました。設計の発想はどんどん膨らんでいく中、待ち方改革も兼ねて「患者さんがどんなことをして待つのか」ということをテーマに、品川クリニックではブースを作るなど色々な取り組みを行い、その延長線上で名古屋駅前クリニックにも取り入れています。
全面電子カルテになったので紙カルテのスペースも不要ですし、スタッフの空間も広げることができればストレス解消にもつながります。
●待ち方改革のほかに、改装された要因があればお聞かせください
刷新したもう一つの理由は、働き方改革です。
産婦人科は女医さんが多く、産休に入る人も多い職場です。他のスタッフもそれは同じで、時短で働きたいという人もいます。
以前、こちらを作った時はドクターがいかに効率よく仕事を進めるかということを重要視していました。朝の8時半には採卵し、少し落ち着いたところで外来、昼過ぎには胚移植をして夕診をいう流れでしたが、今年の正月から発想を変えるようにしました。
やはり、昼前後は時短も含めてスタッフが最も多い時間帯です。子育てをしている人であれば朝は遅く夜は早いほうが良いわけですが、今まで通りであれば、昼間は人が多い割に仕事は少なめになってしまうので、思い切って9時から外来をすることにしました。
これまで、8時半から採卵をしていたところを9時スタートにしたことで、看護師さんも前より遅く出勤できますし、外来をしながら10時半から胚移植、12時からは採卵と色々なことを並行しながら進めることができます。
そして、夕診もこれまでは16時から行っていたところを15時に前倒しし、少しでも早く終わるように心がけています。さらに、電子カルテや自動精算機を導入していますので、事務の人は今までよりも1時間早く帰ることができていると思います。
休憩時間や昼食は各自で確保してもらい、時にはランチョンミーティングもします。その代わり、水曜日の夕方や夕診のない土曜に私が空いていれば、3つのクリニックをつないで合同ミーティングを行うこともあります。
スペースを確保したことで、スタッフを増やしても困らないですし、胚移植と採卵を分けることで混雑が緩和されます。また、麻酔がかかっている患者さんと外来だけの患者さんが交差することもありません。
勝川クリニックについては大きく改装できませんが、紙カルテが不要になったスペースを使って、待合のスペースを増やすことができます。
さらにもう一つ、大きく変えようとしていることがあるのですが、それは予約待合です。当院は1人目に採卵した卵を使って、2人目や3人目を作りたいという方も多いので、こちらも取り入れようと思っています。
待ち時間の短縮は仕事の効率化という点から見ると当たり前に必要なことですが、ゼロにはなりません。品川クリニックと同じ発想になるのですが、どういう風に待ち時間を使うかという待ち方改革を名古屋駅前クリニックでも実現したことになります。名古屋では、品川以上に病院ではなく野原にいるようなリラックスした空間を作っています。絨毯を敷き、受付の天井を青空にするなど面白い取り組みも行っています。
病院の待合室というのはどこも無機質で、患者さんは同じように遠くを見て並んでいますので当院ではそれを避け、放送も流さないようにしています。スマホがない方には携帯をお渡ししているので、呼び出しもメールで行っていますし、アプリも連動しているので、ご自身のスケジュールを確認しながら動いていただいています。
●採卵の時間を変更されたとのことですが、大きな影響はなかったのでしょうか
通常、朝に採卵するということは夜の9時に注射を打つことになります。それは、注射後36時間で採卵しなくてはならないと思っているからですが、そこに根拠はほとんどありません。
特に、PCOの方はもともと排卵しにくいので、36時間にこだわらずLHをモニターしながら管理をすることで、36時間を超えてからの採卵でも遅くはないと考えています。働き方改革の一環で、採卵時間を変えるために取り入れましたが、半年経って何の支障もありません。その代わり、LHはしっかりと測る必要がありますけれども。
36時間以内に採卵しなくてはならないという常識があまりにも行き渡りすぎていますが、私は料理の世界のように色々なことを試してもいいのだと思っています。
ただ、何かを変えるときにはスタッフからの抵抗もあります。とは言え、それが良い方向につながれば効率も格段に上がりますし、患者さんもスタッフにもメリットが多いですよね。
浅田レディースクリニック
https://ivf-asada.jp
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