つばきウイメンズクリニック 鍋田基生院長先生インタビュー

このたびは愛媛県松山市のつばきウイメンズクリニック院長の鍋田基生先生に取材をさせて頂きました。鍋田先生は昨年10月、産科施設と不妊治療施設を併設したクリニック、つばきウイメンズクリニックを開院されました。

 

特に不妊治療に関しては、四国でも数少ない高度な生殖補助医療が可能な施設として、開院以来、患者数が急増しています。そこで、今回は鍋田先生に不妊治療の薬について語って頂きました。

 

院長の鍋田先生です。

院長の鍋田先生です。

 

●不妊治療の薬について思うところを語ってください。

薬は我々医師にとっては必要不可欠なツールと言えます。不妊治療、特に高度生殖医療においては患者さんのからだの状況に合わせて薬剤を投与し、成熟卵を複数作って、採卵出来ることが重要になります。ここに医師の腕というかさじ加減が大事になってきます。良い卵が採れると、妊娠できる確率はぐんと上昇します。

 

例えば、HMG製剤(卵子を育てる薬剤)も様々な種類があります。それは含まれているFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)の含有比率が製剤(製造メーカー)によって違うからです。

 

我々はそれを患者さんの体調やホルモンデータを見ながら、周期毎に調整をしていきます。まさにオーダーメイド医療です。

 

HMG製剤の他にもGnRHアンタゴニストやアゴニストのような薬剤、排卵誘発のためのHCG製剤なども状況に合わせて投与し、排卵のタイミングを調整し、副作用の発生を抑えるようにしています。

 

良い卵子が採れて、培養もうまく進んだら、胚移植になるのですが、黄体ホルモンの補充を行います。体外受精や顕微授精の場合、採卵をしているので、卵胞内の黄体化する細胞も吸引しているために黄体から分泌されるであろう黄体ホルモンが不足するとの考えからです。

 

以前は手作りで黄体ホルモンの製剤を作って、活用していましたが、今は複数の製薬企業から膣坐剤が発売されているのでそれを活用しています。また、内服の黄体ホルモン製剤を使うこともあります。

また、子宮内膜が薄いケースの場合、エストロゲン製剤の他にアスピリンや漢方を活用することもあります。とにかく、様々な薬剤を患者さんの状況に合わせて、投与し、身体を整え、妊娠に導くのが我々の仕事でもあります。

 

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 ●不妊治療以外の薬剤はどうですか?

不妊治療において、意外と多いのは甲状腺疾患を持っている患者さんです。よって、当院では全例で検査して、甲状腺に異常のある患者さんには専門医を紹介し、その上で不妊治療に取り組んでいます。

 

よって、不妊治療に直接関係ないですが、甲状腺ホルモンの投与を行うケースも時々あります。

 

それから、不妊治療においてよく見られる病態としてPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)があります。

 

註:「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovarian syndrome)とは、若い女性の排卵障害では多くみられる疾患で、卵胞が発育するのに時間がかかってなかなか排卵しない疾患です。PCOSでは、超音波で卵巣をみると10mmくらいの同じような大きさの卵胞がたくさんできて卵巣の外側に1列に並び、なかなかそれ以上大きくならないことが特徴で、ネックレスサインと呼ばれます。」

 

PCOSの治療においてはインシュリンが関与している可能性があるので、メトフォルミンという薬剤投与を行うこともあります。

 

●不妊治療における薬剤の副作用についてお話しください。

やはり気になるのはOHSSです。最近、重症例は非常に少なくなってきているとはいえ、良い卵子を複数採るためにはリスクを承知でチャレンジする必要のあるケースもありますので、細心の注意を払って、排卵誘発を行うことになります。

 

註:卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは、卵巣の中にある卵胞が必要以上に刺激されてしまうことで卵巣が膨れ上がり、腹水や胸水などの症状を引き起こしてしまうことを指します。

 

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は不妊治療で過剰に卵胞が刺激されてしまうことで起きやすくなるとされています。PCOSの患者さんがOHSSになりやすいことが知られています。

 

もし、OHSSが起きた場合でもすぐ対応できるにようにしておりますし、当院では入院設備もそろっているのでその点はご安心頂いております。

 

それから、もう一つ気になるのは血栓です。ホルモン製剤を使う時にはついてくる副作用です。めったなことで起きるものではないですが、体質的に血栓ができやすい方もおられるので、ご自身の過去の疾患やご家族で血栓症がないかどうかはとても気にしております。

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 ●新薬はどのような判断で採用を決めておられますか?

まずは海外で使われているかどうか、きちんとエビデンスがあるのかどうかをチェックしています。そして、新薬を使うときは少量ずつ慎重に使っていきます。やはり新薬の場合は副作用が気になりますからね。

 

しかし、世界で発売されておらず、日本が初めてという薬剤もあります。そのような薬剤の場合は治験データをきちんと調べて、作用機序を把握することが大事だと思っています。その上で、有用性が高いと判断出来たら使用することにしております。

 

●製薬企業の情報提供(MRの活動)についてどのように評価されていますか?

MRの皆さんの情報提供については、とても有用な情報を頂くこともあるので、基本的にはウエルカムです。

 

我々のように日々、診療に明け暮れているとどうしても情報が偏ります。よって、医師の立場に立って、有益な情報を提供してくれるMRの方はとても貴重と言えます。

 

●今後、先生のビジョンを教えてください。

昨年の10月に開院して、すでにこの7月でお産が月間50例、体外受精は月間40例に達しております。ほとんど地元の方のクチコミでこのような順調な推移になっていることがとてもありがたいと思っています。

 

私としては開院した限りは出来るだけ多くの患者さんに医療を通じて喜んでもらいたいと思っております。

 

お産では当院が得意としている無痛分娩を広く知って頂きたいと思いますし、不妊治療においては、愛媛においても日本でTOPクラスの医療を提供していくし、どんどん進化させていく予定です。

 

ほとんど家に帰っていないような感じで走っておりますが、日々充実していると感じています。

 

まだまだ、やりたいことがありますので、しばらくは突っ走りたいと思います!

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まとめ>

鍋田先生とお話していると温厚で優しい感じのイメージですが、話が進んでいくと、実は内に秘めたる情熱やエネルギーがあふれている感じです。また、自分達の知恵や技術を磨くための研鑽に時間とお金を惜しまれていないことがわかります。

 

開院間もないのに患者さんがどんどん増えている様子を見ると、患者さんはよくわかっていて、クチコミされるのだなあとわかります。

 

つばきウイメンズクリニックは今後四国において不妊治療をリードしていく施設の一つと言えるかと思います。

 

鍋田先生、長時間の取材に時間を頂き、ありがとうございました!

この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

●関連サイト

つばきウイメンズクリニック

http://www.tsubaki-wc.com

 

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